「作って終わり」にしない医工連携の儲け方

中小製造業の先行モデル現る。行政も支援充実へ

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第一医科などが取り組む難治性メニエール病の治療機器

さいたま市長・清水勇人「中小の『挑戦』後押し」


 さいたま市には高度な技術力を持つ企業が集積している。さいたま医療ものづくり都市構想は、そうしたさいたま市の技術力の高い研究開発型企業を中心に成長市場である医療機器の分野への新規参入と事業拡大を支援する取り組みであり、2011年度に構想を策定し、翌年度スタートした。本市の成長戦略の一つでもある。

 この構想の特徴は、医療機器の分野の中で特に(1)レーザー(2)低侵襲(3)小児を重点分野として設定し、各医学会との連携に積極的に取り組んでいることである。13年から毎年1月、こうした産・学・官・医の連携を活かし、さいたま医療ものづくりフォーラムを開催している。

 フォーラムはシンポジウムとショーケースから成り、シンポジウムでは医工連携における関連施策の動向や成功事例の紹介、地域課題の共有と解決に向けた連携促進を目的とする基調講演やパネルディスカッションなどを実施し、ショーケースでは医師や理工系大学によるポスター展示や企業による技術展示を行う。

 また、昨年度からは医師と企業のマッチングを行う取り組みとして医師によるニーズ発表会を企画、今年度も1月20日に第5回目となるフォーラムを開催する。
さいたま市長・清水勇人氏


 日本全体の成長戦略の柱の一つでもあり、18年には約4500億ドルの市場規模の拡大が予測される医療機器の分野に本市の企業の技術が大いに活用されることを期待している。

 国際展開の取り組みでは、さいたま市はドイツ・バイエルン州の二つの産業クラスター(医療機器クラスター、メカトロニクスクラスター)との技術交流を中心に、市内中小企業などの国際展開支援を推進している。

 これは日本貿易振興機構(ジェトロ)と連携して11年度から4年間にわたり行ってきたもので、14年には二つの産業クラスターと覚書を締結し、ますますビジネス交流を強化している。昨年度はビジネスマッチングが217件あった。これまでに12件の商談が成約、さらに12件の商談が現在継続中である。

「インダストリー4.0」の本場で学ぶ


 また、新たな試みとして昨年度から、さいたま企業とドイツ産業クラスター企業との合同人材研修をバイエルン州で実施した。ドイツの国家プロジェクトである次世代生産システム「インダストリー4・0」を本場ドイツで学び、同時にグローバル人材の育成を目的とする。

 今年度はさいたま企業5社が参加し、「インダストリー4・0」に取り組むドイツ中小モノづくり企業を訪問するとともに、ドイツの技術者と共同での実践的トレーニングが行われた。

 11月にさいたま市で開催した産業交流展「BIZ SAITAMA」では、「インダストリー4・0」の中核技術であるロボティックスの専門家がパネルディスカッションを実施、市内の中小企業の生産現場も訪問し、具体的なアドバイスも行った。

 さらに経済産業省IoT人材育成事業「スマートものづくり応援隊」でも講義を実施するなど、市内モノづくり企業やモノづくりコーディネーターに最新の情報を提供している。

 ドイツ以外の国際展開支援では、成長著しいアジアでの販路開拓を目的に、アジアで開催される展示会にさいたま市ブースを出展し出展企業とアジア企業とのビジネスマッチングを支援する新たな取り組みを昨年度から開始した。

 これは、地域金融機関と連携することで、国際展開の経験の少ない企業であっても果敢にチャレンジできる機会を提供するものである。一昨年は香港のメカトロニクス系の展示会へ、昨年8月にはシンガポールで開催された東南アジア最大級の医療機器展示会に市内企業6社が出展し、海外初出展企業にも有意義な商談があった。

 モノづくり大国ドイツとの交流深化による技術の切磋琢磨(せっさたくま)を通じて市内中小企業のグローバルマーケット開拓、そして、地域金融機関と連携したアジアでの海外販路開拓により、さいたま市内中小企業などの国際展開の支援を行い、地域経済の活性化につなげていきたい。
【略歴】
清水勇人(しみず・はやと)86年(昭61)日大法卒。松下政経塾卒塾(7期生)。埼玉県議を経て09年5月さいたま市長に就任。現在2期目。資産経営・公民連携首長会議幹事。日本サッカーを応援する自治体連盟会長。共栄大学客員教授。埼玉県出身、54歳。

日刊工業新聞2017年1月9日



COMMENT

村上毅
編集局ニュースセンター
デスク

医工連携で製品はできても、実際の売れ行きはさっぱり、という話も少なくない。「作って終わり」にしないためにも、どう儲けるかの出口戦略は重要。目利きができる医療機器の製販企業はその役割を担ってくれる。また医療機関と中小企業、製販企業の連携は行政からの補助金も獲得しやすいという背景もありそうだ。

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