関西-東北-九州 地方創生のチャンスはどこにある?
経済界トップが語る2017年
九州経済連合会会長 麻生泰氏
九州経済は2016年に発生した熊本地震で観光産業を中心に大きな影響を受けた。九州経済連合会は九州産農産物の輸出拡大や外国人観光客の取り込みに積極的な姿勢をみせており、麻生泰(ゆたか)会長に17年の取り組みについて聞いた。
―熊本地震の九州経済への影響は。
「長崎や鹿児島など被災のない地域でも旅行のキャンセルが出た。九州は一つということを観光で再認識した。熊本県は前向きに創造的復興を進めるということで、元に戻すだけでなくステップアップしようとしている。観光も当初は落ち込んだが政府が力を入れてくれた『九州ふっこう割』がけん引した」
―17年度の九州経済の見通しは。
「成長率は全国を上回るだろうし上回らなければと思う。農水産物の輸出は加速し、インバウンド(訪日外国人)も貢献する。熊本地震の復興需要がプラス要素だ。ただ、それが一般消費につながるかは少し心配だ。みんな慎重になっている」
―16年は1次産品輸出の動きが加速しました。
「香港の大きなスーパーマーケットチェーンに安定した輸出先ができた。漁業、林業を含めた1次産業では次世代が興味を持ってくれるような売り上げ増が見えてきそうだ。売り上げを伸ばさないと次の世代が九州に戻ってこない。生活費が安く輸出で伸びるということになれば戻ろうという動きが出て、理想的な地方創生のモデルになる」
―外国人観光客の誘致にどう取り組みますか。
「口コミのリピーターが増えており、すごく伸びしろがある。課題は観光産業、サービス産業の外国人対応力の向上。飲食店のメニューに英語を加え、もうちょっと言葉が通じるといい。Wi―Fi(ワイファイ)や海外テレビ放送への対応もある。インバウンド需要はこれからだ。温泉など九州の奥座敷を強化して宿泊をもう2、3泊伸ばしたい」
―17年の課題は。
「沖縄との連携を強めたい。沖縄に来る台湾の人に鹿児島から九州に入ってもらい、九州からは韓国や中国の人に沖縄にも行ってもらえないかと考えている。物産では九州として一体化したイメージのモノを打ち出してセールスしたい。各地で取り組んでいるブランドを統一することではないが、九州にはそれを生み出す素地がある」
【記者の目/「九州一体」で魅力発信を】
16年の熊本地震は、観光への影響だけでなくサプライチェーンでも九州経済のつながりを否が応にも再認識させた。九州は以前からまとまりが強く、自治体を含め地域振興に一体的に取り組んでいる。一方、同一品目でブランド化に取り組むライバル地域も多く存在する。その環境で一体イメージのモノやコトをどのように生み出すのか注目したい。(文=西部・関広樹)
日刊工業新聞2016年1月11-13日