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関西-東北-九州 地方創生のチャンスはどこにある?

経済界トップが語る2017年
関西-東北-九州 地方創生のチャンスはどこにある?

左から森氏、海輪氏、麻生氏

 英国の欧州連合(EU)離脱や米国のトランプ新政権の動向など不透明感が漂う一方、東京五輪・パラリンピックや万国博覧会(万博)、統合型リゾート(IR)、リニア中央新幹線などビッグプロジェクトの期待感も高まる2017年。株価回復など国内経済も明るい材料が増えてきた。各地域の経済関連団体の首脳に地域経済の現状や今後について聞いた。

関西経済連合会会長 森詳介氏


「リニア・万博バネに飛躍」
 ―関西経済の現況と17年の見通しは。
 「中国経済の減速や賃金の伸び悩みもあるが、インバウンド(訪日外国人)は依然好調だ。足元の設備投資は伸びており、緩やかな回復傾向にある。英国のEU離脱やトランプ政権による環太平洋連携協定(TPP)の脱退問題があり、海外の先行き不透明さはある。TPP次第で日本の通商政策を見直す必要がある」

 ―16年度事業計画の進捗(しんちょく)と17年度の取り組みは。
 「16年度は『複眼型国土の形成』『健康医療の技術革新の創出』『関西広域観光戦略の推進』『アジアでのビジネス機会創出』の4点に取り組んだ。複眼型国土の形成では、リニア中央新幹線の大阪開業の最大8年前倒しが実現した。今後はリニア開通後の関西の発展策を議論し、全体構想を練るきっかけにしたい。観光分野でも外国人向け交通パス『関西ワンパス』が好調に推移し、関西一円のフリーWi―Fi(ワイファイ)も整備できた。17年度も形こそ変わるが、これら4点に力を入れていきたい」

 ―万博やIRへの取り組みは。
 「パリに負けない構想が必要だ。進めるにあたって課題は四つ。万博を奉加帳方式などの“寄付”から経済収益性の高い“投資”に変える必要がある。その点でIRと組み合わせるべきだ。また、大阪府・市には、万博を湾岸部開発の通過点とするまちづくりをお願いしたい。大阪府には日本全体で誘致に取り組むための指導力を発揮してほしい。国には万博を核に、健康医療産業が発展するための道筋を示してほしい」

 ―17年度の抱負は
 「16年度は大きな進展があった。17年度はこれらを具体化する年。方向性が見えてきたので、しっかり肉付けし関西の将来の姿が見えるようにしていきたい」

【記者の目産官まとめる指導力期待】
 関西が再浮上するチャンスが出てきた。リニア中央新幹線、万博・IRに加え、大阪市内では梅田や中之島で都市開発・構想も進む。問題はこれらの案件に対するスタンスが産業界、行政で足並みがそろっていない点にある。これらを俯瞰(ふかん)して関西の将来を描く動きも今のところ見られない。森会長には関経連の動きはもちろん、産業界をまとめ、行政とも密な関係を築き、オール関西となるための指導力を期待したい。
(文=大阪・青木俊次)

〈次ページは東北経済連合会・海輪誠会長〉
日刊工業新聞2016年1月11-13日
三苫能徳
三苫能徳 Mitoma Takanori 西部支社 記者
関西の外から見ると、大阪府を筆頭に声と経済規模の大きさを持った府県がそろう中で、「地域」としての意志共有をどの程度できているのか、あるいはそもそもできる話なのかと思う。関西=大阪でない一方、大阪に資源を集中させる必要性もあるはずなので、国を巻き込んだビッグプロジェクトを活用し、関西としてどのように効果を波及させていくか見ていきたい。 また東北経連の海輪会長が挙げた国際リニアコライダー。岩手(北上サイト)と九州(脊振サイト)で候補地を争っていたが、2014年に立地評価会議は北上に軍配を上げた。国としてはまだ決定していない(そもそも国際的にまだ手も挙げていない)ものの、九州はすっかり誘致ムードが沈静化。その点で熱意のある東北に歩があるかもしれない。ただ、当時は東日本大震災の復興が後押しになったとの話もある(しかも民主党政権だった)ので、熊本震災を経た現在、九州が再度参戦ということもありそう。

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