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独シーメンスと提携した台湾の新興メーカー、ハイウィンは日本で認められるか

直動機器生産で世界2位の実力企業、「インダストリー4・0」戦略
独シーメンスと提携した台湾の新興メーカー、ハイウィンは日本で認められるか

台湾の工作機械展示会でI4・0をPR

 ボールネジなど直動機器の生産で世界2位の台湾ハイウィンが、ドイツの産業政策「インダストリー4・0」対応を促進している。インダストリー4・0に精通する独シーメンスとこのほど提携し、センサーを駆使したインテリジェントボールネジも独自に開発中だ。台湾工作機器業界のリーダーとして成長戦略を実践する同社を、日本と台湾で追った。

シーメンスと提携


 「ウィン・ウィン・ウィンの関係を目指す」―。11月24日、台湾国際工作機械展(TMTS、台中市)の会場でハイウィンとシーメンスはインダストリー4・0事業で提携する会見を行った。

 多くの現地マスコミを前に、ハイウィンの創業者である卓永財会長は「今回の提携は当社とシーメンスに加え、台湾の工作機械業界にもウィン(好結果)をもたらすものだ」と強調。シーメンスも「製品の開発から量産までを短縮したり、フレキシブル生産対応などで協力できる」(エルダル・エルバー台湾シーメンス社長)と訴えた。

 ハイウィンとシーメンスのコラボレーションは既に始まっている。2015年にハイウィングループ入りした台湾ルーレン(新竹市)の新型5軸加工機には、シーメンスのコンピューター数値制御(CNC)装置、ハイウィンのボールネジや回転テーブルなどの工作機器が組み込まれた。卓会長は「シーメンスと協力し、多くの台湾メーカーが進める高度な5軸加工機を開発できるよう、支援していく」と意欲をみせる。

 インダストリー4・0の象徴と位置づけるハイウィン製品も自社で開発中だ。先日の日本国際工作機械見本市(JIMTOF)でも披露された「インテリジェントボールネジ」。6年前から開発を進めており、独自センサーを使い振動や熱変位などボールネジの状態を診断し故障前予測が行える。インターネットを介しスマホでのモニター監視も可能だ。卓会長は「来年末までの量産」を明言する。

「高級機種では台湾製部品の採用は見送っている」


 ハイウィンは台湾で上場するハイウィンテクノロジー(台中市)と、ハイウィンマイクロシステム(同)の2社を核にグループを形成する。2社を合わせた従業員数が約4800人、売上高は2015年12月期で約630億円。ボールネジやリニアガイドウェイなど直動機器の生産能力はTHKに次ぐポジションを世界市場で確保する。ここ数年は自動化に貢献する工業用ロボットにも力を入れる。

 シェアトップの台湾や中国に加え、欧米でも存在感を示す同社だが、日本市場はまだこれからだ。ハイウィン製品の採用実績がある日本の工作機械メーカー幹部は「高級機種では台湾製部品の採用は見送っている」と明かす。厳しい日本市場で認められるかは、さらに同社が成長するための試金石となる。

<次のページ、卓永財会長インタビュー>

日刊工業新聞2016年12月7日
六笠友和
六笠友和 Mukasa Tomokazu 編集局経済部 編集委員
加工する物を載せてクルクル動く工作機械の回転テーブルは、すでに日本メーカーにも採用されています。工作機械がより難しい加工をもっと精度良くするには、直動機器や回転テーブルのレベルアップがマストです。台湾の工作機械産業が「安かろう悪かろう」から真に脱皮するために、ハイウィンの役割は大きいでしょう。こうした工作機械である5軸加工機は増えており、同社の成長余地も大きいと思います。

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