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「TRON」の未来はIoTにあり

14日からシンポジウム
「TRON」の未来はIoTにあり

2015年のトロンシンポジウム(トロンフォーラム提供)


事業者の情報連携で“おもてなし”「サービス4.0」


 ―5年後には、どの程度まで進展しているイメージですか。
 「今のIoTをめぐる状況と同じように、普及前夜のようになっているだろう。認知度はかなり進むと思う。ただ、実用化まですぐにはいかない。2020年には東京オリンピック・パラリンピックが開催されるが、そのときに普及を期待しているのが総務省の進める「サービス4.0」。IoTの適用範囲が製造業に加え、サービス業にも及ぶことに大きな意義があると思っている]

 「アグリゲートの考え方はいろんなところにあって、IoTによるサービス連携の意義も大きい。一つの事業者だけから全てのサービスを受ける人はいない。ホテルのコンシェルジェお勧めの場所に行くのにタクシーや電車、バスに乗らなくてはいけないが、その情報を受け渡すには、事業者同士がデータ連携しないといけない」

 「日常生活ではそれを自然言語でやっているのに対し、「サービス4.0」ではコンピューターのプロトコルに置き換える。日本の場合は言葉の問題があるので、外国人観光客に『おもてなしカード』というICカードや『おもてなしアプリ』を持ってもらう。観光情報が記憶されたカードやスマートフォンを行く先々で提示し、クラウドで情報連携する仕組み。こうすることで旅行者と事業者の間で、早く安く便利に情報がやりとりできるインフラになる」

 ―製造業よりサービス産業の方によりインパクトがありますか。
 「総務省のサービス連携委員会にはホテルからデパート、小売業、街づくりに関わる方々が委員に入っていて、『おもてなしインフラ』を熱望されている。そういうエンドユーザーのリクエストを最大限に盛り込んでいく」

 「少子高齢化で日本の国内経済が縮小する中、インバウンドを取り込む観光ビジネスは非常に大きな意味を持つ。日本で成功したら、観光を誘致したいと思っている他の国も使いたいとなるのではないか」

自動運転、ロボット普及へ法制度見直しを


 ―一方で、ロボットや自動運転車が注目されています。今後、社会にどんなインパクトを与えるでしょう。
 「ロボットや自動運転では、組み込みコンピューターの進化も貢献している。分散コンピューティングによる制御工学が飛躍的に進んできた。大量のデータが得られ、コンピューターが安価になり、クラウドが使えるようになった。無線通信も進歩している。ロボットや自動運転も、その意味ではネット化された組込みでありIoTの一部だ」

 「それら技術進歩の結果、ロボットにしても自動運転にしても実用レベルになってきた。ただ、自動運転車やロボットはコンピューターと違い、現実世界に威圧感を持って登場してくるので、人々の考え方がそういうものを受け入れるようにならないと普及は難しい。技術進歩だけでなく、社会変化が必要だ。そこを乗り越えられれば、技術的には問題ない」

 「最近の高齢者による交通事故を見ていると、日本こそ自動運転を受け入れた方がいいと思う。自動運転より人間の方が交通事故を引き起こす確率が高い。とくに、車がなくては移動できないような地方にいち早く導入し、自動運転車の先進国になっていくべきだ」

 「日本は『鉄腕アトム』の国でもあるし、介護ロボットが町中を歩いていてもおかしくはない。ただ、こうしたことは法律の改正が必要で、国家戦略特区にも期待している。少子高齢社会を解決するカギはIoT、自動運転車やロボットにあることを政府は認識し、ネット時代に向けて法律の見直しに取り組むべきだ」

日刊工業新聞2016年3月31日付別刷特集掲載


※内容は当時のもの
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役デジタルメディア事業担当
組み込み型のリアルタイムOSとしてカメラや事務機器、自動車、人工衛星などあらゆるところで大活躍している。いわばIoTの先駆け的な存在。坂村教授によるとフリーでオープンがトロンの真骨頂という。シンポジウムではどのような未来が語られるか。

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