「TRON」の未来はIoTにあり
14日からシンポジウム
トロンフォーラム(東京都品川区、坂村健会長=東京大学教授、03・5437・0572)主催による「2016トロンシンポジウム」が14日、東京・赤坂の東京ミッドタウンホールで開幕する。今回は「IoT動く」をテーマに、IoT(モノのインターネット)を実現する各社の組み込みシステムやクラウドシステム、デバイス、技術の展示のほか、坂村会長による基調講演、IoT関連の各種講演やパネル討論会が予定されている。
シンポでは、トロンプロジェクトが提唱するオープンIoT実現に向けたコンピューティングモデル「アグリゲート・コンピューティング」と、そのエッジ側の標準デバイス「IoTエンジン」についての講演をはじめ、2020年に向けた社会全体のICT化推進、モノや場所を識別する世界標準識別子「uコード」とクラウド上のサービスを実現する「uID2.0アーキテクチャ」を解説する。
公共交通オープンデータ、訪日外国人向けに各種ICカードやスマートフォン、デジタルサイネージ(電子看板)などを利用してサービス連携を実現する「IoTおもてなしクラウド」などのセッションもある。
さらに、技術協賛するIEEE(米電気電子学会)の幹部が同家電部会のIoTへの取り組みを報告。IEEEが現在あるいは将来採り上げようとしているスマートシティー、サイバーセキュリティー、リブーティング・コンピューティング、ソフトウエア・ディファインド・ネットワーク(SDN)といった新規分野の活動についても紹介する。会期は16日まで。事前登録者は無料。
モノのインターネット(IoT)への世間の関心が急速に高まっている。中には「モノ同士がインターネットでつながることで、インターネット以上に世界が変わる」と予測する専門家さえいる。そこで、リアルタイム組み込み基本ソフト(OS)「トロン」の開発で知られ、IoTが話題になるずっと以前から、それを先取りするコンセプトを提唱してきた東京大学の坂村健教授に、近未来のIoTの姿などについて聞いた。
―IoT(モノのインターネット)が注目されています。この先どう発展するとみていますか。
「私が進めてきたトロンプロジェクトでは、すべてのモノに組み込みコンピューターが入り、ネットワークでつながるシステムを追求してきた」
「プロジェクト開始から約30年が経過して、半導体チップの性能や集積度が向上し、インターネットの急激な進化も相まってすべてのモノをネットにつなぐ環境が完成してきた。今後、IoTそのものがビジネスとして立ち上がっていくだろうし、次の時代の標準インフラになるのは間違いない」
「一方で、ビッグデータや人工知能(AI)とIoTは一見関係ないようで、実はすべてが関連している。モノがネットにつながるといろんなデータが集まってくる。AIの新しい手法に大量のデータが投入されることによって、AIやディープラーニングがさらに進展する好循環が起きている」
「ある意味、大型コンピューター、パソコン、モバイルと進んできた大きな階段を、また一段上っているとも言えるし、情報処理と組み込みというコンピュータ応用の大きな二つの流れが合流するという意味では、まったく新たなステージに入ったとも言えるだろう」
―IoTの関連で、坂村先生は「アグリゲート・コンピューティング(Aggregate Computing)」を提唱しています。
「それを説明するのによく言っているのが、携帯電話の機能を分解すること。たとえば、いまスマートフォンに電話がかかってきたとしたら受話ボタンを押さない限りつながらない」
「でも、なぜ携帯電話やスマホをポケットから出してボタンを押さなければいけないのか。『電話受けるよ』と言葉で言ったり、ソファーやテーブルを叩いたりすることで電話がつながるようにしてもいい。それが私が提唱しているアグリゲート・コンピューティングの基本的な考え方だ」
―モノが全てネットワークでつながっているわけですからね。
「テレビのスピーカーはテレビの音を聞くのにしか使っていないし、天井の火災警報器にもスマホにもスピーカーが付いている。自分しかいないのなら、電話の声がそこから聞こえてきてもいいし、何より電話機がいらない。つまり『私がここにいると言うことがわかる』ことが重要になる」
「そうなると必要なのは空間におけるポジショニング(位置検出)システム。通信機能だけ体に着け、手でテーブルを叩いたら『もしもし』と話せることも不可能ではない。このように周囲のあらゆる機器の機能を連携させることで目的を最適な形で果たすということをあらゆることでやろうというのが、アグリゲート・コンピューティングだ。
「まさに機能のシェアリング。これから低成長の時代になるし、地球環境保護の観点からも、簡素でエネルギーを使わない、コストをかけない形態に社会全体を変えていかないと破綻する」
「IoTからAI、センサー、組み込み技術、それにネットワークが総体的に協力し合って一つのことを達成するアグリゲート・コンピューティングを活用して、シェアリングエコノミーを完成させることに一番興味がある」
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シンポでは、トロンプロジェクトが提唱するオープンIoT実現に向けたコンピューティングモデル「アグリゲート・コンピューティング」と、そのエッジ側の標準デバイス「IoTエンジン」についての講演をはじめ、2020年に向けた社会全体のICT化推進、モノや場所を識別する世界標準識別子「uコード」とクラウド上のサービスを実現する「uID2.0アーキテクチャ」を解説する。
公共交通オープンデータ、訪日外国人向けに各種ICカードやスマートフォン、デジタルサイネージ(電子看板)などを利用してサービス連携を実現する「IoTおもてなしクラウド」などのセッションもある。
さらに、技術協賛するIEEE(米電気電子学会)の幹部が同家電部会のIoTへの取り組みを報告。IEEEが現在あるいは将来採り上げようとしているスマートシティー、サイバーセキュリティー、リブーティング・コンピューティング、ソフトウエア・ディファインド・ネットワーク(SDN)といった新規分野の活動についても紹介する。会期は16日まで。事前登録者は無料。
坂村健教授インタビュー
モノのインターネット(IoT)への世間の関心が急速に高まっている。中には「モノ同士がインターネットでつながることで、インターネット以上に世界が変わる」と予測する専門家さえいる。そこで、リアルタイム組み込み基本ソフト(OS)「トロン」の開発で知られ、IoTが話題になるずっと以前から、それを先取りするコンセプトを提唱してきた東京大学の坂村健教授に、近未来のIoTの姿などについて聞いた。
次の時代の標準インフラに
―IoT(モノのインターネット)が注目されています。この先どう発展するとみていますか。
「私が進めてきたトロンプロジェクトでは、すべてのモノに組み込みコンピューターが入り、ネットワークでつながるシステムを追求してきた」
「プロジェクト開始から約30年が経過して、半導体チップの性能や集積度が向上し、インターネットの急激な進化も相まってすべてのモノをネットにつなぐ環境が完成してきた。今後、IoTそのものがビジネスとして立ち上がっていくだろうし、次の時代の標準インフラになるのは間違いない」
「一方で、ビッグデータや人工知能(AI)とIoTは一見関係ないようで、実はすべてが関連している。モノがネットにつながるといろんなデータが集まってくる。AIの新しい手法に大量のデータが投入されることによって、AIやディープラーニングがさらに進展する好循環が起きている」
「ある意味、大型コンピューター、パソコン、モバイルと進んできた大きな階段を、また一段上っているとも言えるし、情報処理と組み込みというコンピュータ応用の大きな二つの流れが合流するという意味では、まったく新たなステージに入ったとも言えるだろう」
「アグリゲート・コンピューティング」提唱
―IoTの関連で、坂村先生は「アグリゲート・コンピューティング(Aggregate Computing)」を提唱しています。
「それを説明するのによく言っているのが、携帯電話の機能を分解すること。たとえば、いまスマートフォンに電話がかかってきたとしたら受話ボタンを押さない限りつながらない」
「でも、なぜ携帯電話やスマホをポケットから出してボタンを押さなければいけないのか。『電話受けるよ』と言葉で言ったり、ソファーやテーブルを叩いたりすることで電話がつながるようにしてもいい。それが私が提唱しているアグリゲート・コンピューティングの基本的な考え方だ」
―モノが全てネットワークでつながっているわけですからね。
「テレビのスピーカーはテレビの音を聞くのにしか使っていないし、天井の火災警報器にもスマホにもスピーカーが付いている。自分しかいないのなら、電話の声がそこから聞こえてきてもいいし、何より電話機がいらない。つまり『私がここにいると言うことがわかる』ことが重要になる」
「そうなると必要なのは空間におけるポジショニング(位置検出)システム。通信機能だけ体に着け、手でテーブルを叩いたら『もしもし』と話せることも不可能ではない。このように周囲のあらゆる機器の機能を連携させることで目的を最適な形で果たすということをあらゆることでやろうというのが、アグリゲート・コンピューティングだ。
「まさに機能のシェアリング。これから低成長の時代になるし、地球環境保護の観点からも、簡素でエネルギーを使わない、コストをかけない形態に社会全体を変えていかないと破綻する」
「IoTからAI、センサー、組み込み技術、それにネットワークが総体的に協力し合って一つのことを達成するアグリゲート・コンピューティングを活用して、シェアリングエコノミーを完成させることに一番興味がある」
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