ニュースイッチ

エプソンの紙リサイクル機は森林破壊に一石を投じるか

いよいよ月内に投入。「コスト削減ありきの売り方はしない」(碓井社長)
エプソンの紙リサイクル機は森林破壊に一石を投じるか

セイコーエプソンのオフィス製紙機「ペーパーラボ A―8000」。コピー用紙を再生する


違法伐採、原住民と紛争


 世界規模で森林破壊は進行し、1年間に日本の国土の1割に当たる面積の森林が世界から消失している。木材利用や火災もあるが、紙需要の増加も原因にあると考えられている。

 インドネシアでは、原生林を大規模伐採したとして現地製紙会社が非政府組織(NGO)から非難される。生活の場を追い出された原住民との紛争が絶えないからだ。森林伐採が原因の火災も多発し、煙害が周辺国へ広がって健康被害も懸念されている。現地製紙会社は森林保護方針を宣言し、環境保全を始めた。

 NGOは違法伐採を繰り返す製紙会社から紙を購入しないように、利用する側の企業に呼びかけている。違法伐採された森林資源の調達をリスクと考える企業も出てきた。購入を続けていると自然破壊や原住民への人権侵害に加担していると批判される恐れがあるからだ。

 紙の問題を追求してきたWWFジャパンは13年、企業と「持続可能な紙利用のためのコンソーシアム」を立ち上げた。「持続可能な紙」とは、生態系に配慮して適切に管理された森林資源が原料の紙。第三者が持続可能と確認した森林資源を使った認証紙もある。

 コンソーシアムでは味の素、花王、カシオ計算機など8社が、製紙会社と意見交換しながら持続可能な紙を増やす方法を議論している。

 WWFジャパンの古澤千明氏は「コンソーシアムの目的には紙を利用する企業、供給する企業の協力と連携がある。お互いが課題を理解する場となっている」と説明する。

 日本人1人当たりの紙使用量は世界平均の3倍以上という。企業に紙の節約は定着したが、まだ減らせる余地はありそうだ。削減が限界なら、産地を意識して適切な紙を選ぶことで環境負荷低減に貢献できる。

産地を意識、適切な紙選定


 90年代からオフィスで紙の削減に取り組んできたソニーもコンソーシアムのメンバーだ。活動が浸透し、削減の余地がなくなった00年代初め、使う紙を認証紙か再生紙にすることにした。同社CSRグループの石野正大マネジャーは「紙も有限な資源。どうしても使うなら環境負荷の低い紙にした」という。

 紙の購入方針を掲げ、「封筒、名刺、製品のカタログ、取扱説明書など会社の発行物は、認証紙か再生紙のどちらからを優先的に使う」(ソニーグローバルマニュファクチャリング&オペレーションズの大越大輔マネジャー)と徹底している。

 紙の節約も継続している。海外向けの「ウォークマン」とヘッドホンには2―9カ国分の説明書をつけていた。言語にかかわらず理解できるイラストにして説明書を1枚にまとめ、15年度はウォークマンとヘッドホンの分だけで16・7トンの紙を減らした。
日刊工業新聞2016年12月1日
松木喬
松木喬 Matsuki Takashi 編集局第二産業部 編集委員
記者会見で驚いたのはカネカ、住友理工、東京センチュリーなどが導入予定と発表したこと。まずはアーリーアダプターから、そしてプリウスのように広がっていくのでしょうか。8日にはエプソンの碓井社長がエコプロ展で会見します。昨年のエコプロで同業他社の幹部が「あの技術はすごい」とペーパーラボを評価していたのを思い出します。

編集部のおすすめ