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世界のR&D支出トップ1000社、日本企業は16社が圏外に

Strategy&調べ。首位はVW、日本トップのトヨタは10位

自動車業界は積極姿勢を継続


 2016年度に計画する研究開発費を問う設問には、有効回答239社のうち184社が回答し、その平均は15年度実績比2・5%増だった。増加を見込むのは7年連続。「増やす」と答えたのは134社。全22業種中、17業種が15年度よりも増額を見込んでいる。

 業種別にみると、業種全体として投資額の多い「自動車・部品」の分類では、19社中14社が増額と回答。「新車開発や環境技術、安全技術の研究を進める」(富士重工業)など、新技術開発に取り組む姿勢を示した。

 4年連続で伸び率が堅調に推移する「家電・部品」は12社中11社が15年度より増額すると答えた。「自動運転関連など事業分野を拡大」(パイオニア)、「車載モジュール製品やスマートフォン用製品、各種センサーなど新製品開発」(アルプス電気)といった回答があった。

 一方、「医薬・トイレタリー」は全体としては微減ながら、22社中16社が増額。「医薬品の適応拡大に向けた開発費用が増加」(小野薬品工業)、「基礎研究および海外向け製品開発を強化」(資生堂)と、新製品開発に向け積極的な考えだ。

 また、「医療・介護機器の製品化、太陽光や大型風力発電などの開発力を強化」(安川電機)、「排出ガス規制対応、分野別・地域別商品開発、次世代商品開発」(コマツ)、「IoT関係商品化、自動化、レーザー加工商品の拡充」(アマダHD)など、研究開発費の具体的な使い道を掲げた企業も少なくない。

力を入れるテーマは?環境・エネルギー重視、変わらず


 力を入れている分野を聞いた設問(複数回答)では、回答のあった230社のうち、68・3%が「環境・エネルギー」と答えた。70%超の社が回答した2015年度に比べ割合こそ減ったものの、同分野を重視する傾向は変わらない。テーマとしてはパナソニック、川崎重工業、東邦ガスが水素関連技術を挙げた。

 2番目に多かったのが「ナノテク・材料/新素材」(47・8%)、次いで「医療・ライフサイエンス」(46・5%)、「情報通信技術(ICT)・エレクトロニクス」(43・9%)が続いた。「iPS細胞(人工多能性幹細胞)技術の老化研究への応用」(コーセー)など注目技術の回答もあった。

 上位4分野は15年度と同じだが、16年の新潮流として、IoT(モノのインターネット)と人工知能(AI)分野の重点化が鮮明になった。15年は5位だった「安全・防災」(24・8%)分野を抑え、「ビッグデータ/IoT」が、15年比約15ポイント増の36・5%と大幅に伸長。「ロボット/AI」分野も、同約2倍の27・8%に伸びた。

 具体的には日立製作所、パナソニック、三菱電機、安川電機、NTTドコモなどがAIを、NECやNTTなどがセキュリティー技術の開発にそれぞれ力を注ぐと回答。「センサー・センシング技術」(日立、シャープなど)の回答も目立った。

 「自動運転」(三菱電機など)や「ドローン自律飛行」(リコー)、「手術支援ロボット」(オリンパス)といった先端をゆく研究テーマも並んだ。

6割が海外に「足場」


 向こう数年の研究開発人員についての設問では、回答した223社中、82社(36・8%)が「増やす」と答えた。その比率は2015年度の調査と比べて0・9ポイント減少したものの、過去5年間の中では2番目に高い水準だった。「横ばい」は93社(41・7%)、「減らす」は5社(2・2%)だった。

 「増やす」と答えた比率は、リーマン・ショックの影響が表れた09年度調査で前年度比20・7ポイント減の31・2%と急減。その後は30%前後の水準が続いている。16年度の結果を業種別に見ると「総合電機・重電」は未定とした東芝を除く5社が「増やす」と回答。「産業機械・造船・車両」も約60%の企業が「増やす」と答えた。

 海外の研究開発拠点の有無に関する設問では、回答した232社中、120社(51・7%)が「複数箇所あり」と回答。「1カ所あり」とした15社(6・5%)を含めると、海外に拠点を持つ企業が約60%を占めた。「ないが持つ予定/持ちたい」は13社(5・6%)、「ない/設置の予定なし/未定」は84社(36・2%)となり、15年度調査とほぼ同様の分布となった。

 海外に拠点を持つメリットについては、現地の顧客ニーズを素早く研究開発に反映できる点や、優秀な研究者を確保できる点を挙げる企業が目立った。さらに「日本人にはない発想が期待できる」(リコー)、「特にヘルスケア分野ではバイオベンチャーにアクセスしやすい」(三菱ケミカルホールディングス)といった指摘もあった。

日刊工業新聞2016年7月26日


明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役ブランドコミュニケーション担当
企業規模や業種によっても多少は違えど、いかに経営トップがR&D戦略に深くコミットしているかで有効性が大きく左右されると思う。コミットとは経営者自身がさまざまなR&Dイベントに時間を割き、理解と厳しい目を向けること。必ずしもR&D出身のトップでなくてもそれはできるはず。自分が比較的知っているR&D出身の日本の経営トップといえば、現役ではパナソニックの津賀さん、エプソンの碓井さん、経験者では三菱電機の野間口元社長。エプソンの最近の事業や送り出しくる技術をみると、R&Dと事業部門で良い循環ができていると感じる。

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