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トヨタとスズキ、両者と両社の運命的な握手の瞬間

「もっといいクルマづくりに向けた“やらまいか”の提携」
トヨタとスズキ、両者と両社の運命的な握手の瞬間

トヨタの豊田社長(左)とスズキの鈴木会長<16年10月12日>

 業務提携交渉から約3年。トヨタ自動車スズキの関係はようやく資本提携に発展するようです。

「深い縁を感じる」

日刊工業新聞2016年10月13日


 トヨタ自動車は12日、スズキと業務提携に向けた検討を始めると発表した。スズキは課題としていたコネクティッドカーや自動運転、環境などの先進技術についてトヨタの協力を得る。トヨタは業界のグローバル標準づくりなどを進めるための「仲間づくり」の一環とする。資本関係については「何も決まっていない」(豊田章男社長)とした。

 同日、トヨタの東京本社で豊田社長と鈴木修スズキ会長が会見した。両者が口をそろえたのが「情報などを中心とした技術競争が急速に変化している」(鈴木会長)という業界での激変だ。

 鈴木会長は「伝統的な自動車技術を磨くだけでは将来は危ういと理解している」と危機感を強調。以前からの相談相手の豊田章一郎トヨタ名誉会長に9月頃に打診。そしてつい先週、豊田社長にも相談したという。

 両社はともに遠州地域を発祥の地とし、織機製造をルーツとする。豊田社長は「深い縁を感じる」としみじみ語った上で「もっといいクルマづくりに向けた“やらまいか”の提携」と遠州方言を交えて語った。



中西孝樹
中西孝樹 Nakanishi Takaki ナカニシ自動車産業リサーチ 代表
1990年代、活力を喪失していたトヨタ自動車の再興を担って登場したのが奥田元社長であった。それがトヨタのグローバル化への挑戦であり、戦略の基本に国内軽市場を攻撃し、スズキを叩くことにあった。トヨタの国内経営基盤を固め、世界に思い切り打って出ることを可能としたのである。これを契機として、トヨタとスズキは宿命のライバルとなった。「敵の敵は味方」。スズキはトヨタの敵であるゼネラルモーターズとフォルクスワーゲンとのアライアンスに活路を求め、その結果、迷走を続けた。ところが、トヨタも奥田氏が敷いた拡大戦略につまづき、経営は創業家に回帰し、「未来のトヨタ」のあるべき姿に悩むところに立つ。長年に渡り、国内自動車産業の成長を支え続けてきたのが豐田章一郎名誉会長と鈴木修会長の2人である。ついに、両者は和解に達し、国内自動車産業の未来への筋道を示した、両者(両社)の運命的な握手の瞬間である。

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