ファナック、工場用IoTの日本代表に躍り出る
日立や富士通も吸い寄せられるプラットフォームの可能性
ファナックが年内投入を計画する工場用IoT(モノのインターネット)基盤「フィールド・システム」の実像が、明らかになりつつある。基本システムの確立に向けNTTなど4社と協業するほか、システム構築(SI)やソフトウエア開発などを担うその他の企業200社以上と連携することが分かった。相手先は日立製作所や富士通といった大手から、中小・ベンチャー企業までさまざま。IoTの普及期を見据えた新たなオープンイノベーションとして、注目されている。
「将来のIoT技術を先取りしたプラットフォーム(基盤)になる」―。都内で29日に開いた会合「パートナーカンファレンス」で、稲葉善治会長兼最高経営責任者(CEO)はフィールド・システムをこう紹介した。
会場には、同システムの事業化で協力を予定する約200社が集結。ファナックはこうした協業先が同システム用の機器やソフトを開発できるよう、技術仕様などを共有するためのAPI(応用プログラムインターフェース)提供を始めた。
フィールド・システムの基本的な仕組みについては、プリファード・ネットワークス(PFN、東京都千代田区)、米シスコシステムズ、米ロックウェル・オートメーション、そしてNTTとの共同開発が進む。
4社目のNTTと協業することを7月に発表した際、稲葉会長は「コアパートナーはこれで一段落。今考えていることは、この(4社と形成する)グループで完成できる」と述べた。
では今回カンファレンスに参加した他の企業の役割は何か。稲葉会長は「当社の製品だけで工場全体をIoT化するのは難しい」と広範囲に他社と連携する理由を説明する。
例えば各種センサー、モーター、その他工場自動化(FA)用部品などのメーカー。各社はファナックが提供するAPIを基に、“フィールド・システム対応”の製品を開発する方針だ。
これにより、ファナック以外の製品もつながるさまざまなタイプのIoTシステムを構築できるようになる。ファナックは主力のロボットやコンピューター数値制御(CNC)装置を核にしつつ、対応範囲を広げることで課題解決力の向上を図る。
またソフト開発企業は、APIを利用してフィールド・システム上で稼働するアプリケーションソフトを製品化する。ユーザーはインターネットから必要なアプリを必要な分だけダウンロードすることが可能だ。
ファナック自身も積極的にアプリを開発・提供する方針で、既に商用化しているロボット用遠隔監視・予防保全システム「ゼロダウンタイム機能(ZDT)」のほか、多種多様なアプリを今後投入するとみられる。
フィールド・システムの大きな特徴の一つが、導入案件を取りまとめる「トータルインテグレーションパートナー」の存在だ。ロボット、工作機械、その他FAシステムなど各領域で強みを持つSI企業と連携し、ユーザーに対する窓口として機能するのが役目。同システムの浮沈を左右するキープレーヤーとも言える。
この重責を担うのが、日立製作所、富士通、DMG森精機など現状で10社程度の有力企業。日立の東原敏昭社長兼CEOは「(同システムを)日本発のIoTプラットフォームとして、グローバルに発展させていきたい」と意気込む。またファナックの稲葉会長は、「特に自動車メーカーなど大企業がユーザーの場合に、活躍してくれるはず」とトータルインテグレーションパートナーの力に期待する。
IoTが普及期に入りつつある中、先駆的な取り組みでFA業界の主導権を握ることが、ファナックの狙いだ。あらゆるモノがネットワークで“つながる”IoTの時代では、他社と積極的に協業するオープンイノベーションが不可欠。
稲葉会長は、ロボットなどで競合する企業とも「将来的には連携していきたい」としている。今後、このオープンイノベーション体制をどのように発展させていくか―。同社、そしてモノづくりの未来を左右する取り組みとして、目が離せない。
<次のページ、フィールド・システムの応用例>
カンファレンスに200社集結
「将来のIoT技術を先取りしたプラットフォーム(基盤)になる」―。都内で29日に開いた会合「パートナーカンファレンス」で、稲葉善治会長兼最高経営責任者(CEO)はフィールド・システムをこう紹介した。
会場には、同システムの事業化で協力を予定する約200社が集結。ファナックはこうした協業先が同システム用の機器やソフトを開発できるよう、技術仕様などを共有するためのAPI(応用プログラムインターフェース)提供を始めた。
フィールド・システムの基本的な仕組みについては、プリファード・ネットワークス(PFN、東京都千代田区)、米シスコシステムズ、米ロックウェル・オートメーション、そしてNTTとの共同開発が進む。
4社目のNTTと協業することを7月に発表した際、稲葉会長は「コアパートナーはこれで一段落。今考えていることは、この(4社と形成する)グループで完成できる」と述べた。
囲い込みかオープンイノベーションか
では今回カンファレンスに参加した他の企業の役割は何か。稲葉会長は「当社の製品だけで工場全体をIoT化するのは難しい」と広範囲に他社と連携する理由を説明する。
例えば各種センサー、モーター、その他工場自動化(FA)用部品などのメーカー。各社はファナックが提供するAPIを基に、“フィールド・システム対応”の製品を開発する方針だ。
これにより、ファナック以外の製品もつながるさまざまなタイプのIoTシステムを構築できるようになる。ファナックは主力のロボットやコンピューター数値制御(CNC)装置を核にしつつ、対応範囲を広げることで課題解決力の向上を図る。
またソフト開発企業は、APIを利用してフィールド・システム上で稼働するアプリケーションソフトを製品化する。ユーザーはインターネットから必要なアプリを必要な分だけダウンロードすることが可能だ。
ファナック自身も積極的にアプリを開発・提供する方針で、既に商用化しているロボット用遠隔監視・予防保全システム「ゼロダウンタイム機能(ZDT)」のほか、多種多様なアプリを今後投入するとみられる。
フィールド・システムの大きな特徴の一つが、導入案件を取りまとめる「トータルインテグレーションパートナー」の存在だ。ロボット、工作機械、その他FAシステムなど各領域で強みを持つSI企業と連携し、ユーザーに対する窓口として機能するのが役目。同システムの浮沈を左右するキープレーヤーとも言える。
競合企業はどう動く
この重責を担うのが、日立製作所、富士通、DMG森精機など現状で10社程度の有力企業。日立の東原敏昭社長兼CEOは「(同システムを)日本発のIoTプラットフォームとして、グローバルに発展させていきたい」と意気込む。またファナックの稲葉会長は、「特に自動車メーカーなど大企業がユーザーの場合に、活躍してくれるはず」とトータルインテグレーションパートナーの力に期待する。
IoTが普及期に入りつつある中、先駆的な取り組みでFA業界の主導権を握ることが、ファナックの狙いだ。あらゆるモノがネットワークで“つながる”IoTの時代では、他社と積極的に協業するオープンイノベーションが不可欠。
稲葉会長は、ロボットなどで競合する企業とも「将来的には連携していきたい」としている。今後、このオープンイノベーション体制をどのように発展させていくか―。同社、そしてモノづくりの未来を左右する取り組みとして、目が離せない。
<次のページ、フィールド・システムの応用例>