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ソニー・十時、ヤマハ発動機・西城、ZMP・谷口が語るオープンイノベーションの未来

ベンチャーも大企業も関係ない。好奇心とオーナシップを持つ人と人が共創する
ソニー・十時、ヤマハ発動機・西城、ZMP・谷口が語るオープンイノベーションの未来

左からソニーの十時氏、ヤマハ発動機の西城氏、ZMPの谷口氏


ベンチャーは怪しくて当然。社会的大義があるかどうか


 本田 西城さんにお聞きしたい。日本とシリコンバレーのベンチャーを天秤にかけたりすることはありますか。目利きという意味ではベンチャーの数がすごく多い。

 西城 谷口さんのおっしゃったネーミングはすごく重要だと思います。コンセプト名は必ず入れた方がいい。それはビジョンですよね。そこの一致というのは大事。社内伝言ゲームでそこは薄れないところなんで。いいポイントを突かれている。

 目利きは自社で全部できるわけでもないですし、十時さんもおっしゃったんですけど、日本は相手の足りないものをみる傾向がすごく強い。先方の何がすごいのか、を見る癖をまずつける。

 もちろんベンチャーは怪しいですよ。未来のことをやっているので。確実なものは何もないわけですよ。それでも「もしこれが起きたら世の中変わるよね」というインパクト、マグニチュードは目利きができなくても分かるわけですよ。

 ベンチャー投資というのは、リスクを取りにいくことは決まっていることなので、リスクに対してリターンが大きいことをまず一番に確認する。それと社会的大義ですね。誰かがちょっとハッピーになるとかにはあまり興味なくて、社会がどこまでよくなるのか、を見る。そこがポイントです。

 目利きなんですけど、実際、私がコーポレートベンチャーキャピタル(CVC)のような動きをして気づいたことなんですけど、CVC同士が密にコミュニケーションして、みんなでデューデリとかスクリーニングできるんですよ。

 今、私たちが投資している案件では、ベライゾンベンチャーキャピタルとシンジケートになったんでけど、彼らの紹介でいろいろ技術的なアセスメントをしてくれて、逆にロボットのことは僕らがみたり。それも違う形のオープンイノベーション。企業同士が未来に向けての投資案件をオープンにディスカッションできる。面白いポイントだと思います。

 日米の比較は、私があまり日本のベンチャー見ていないんで一般的にですけど、大義の面で少しこぶりな面があります。日本の市場を見すぎている。日本の市場は特殊で、もっと世界の中でどれだけバリューを作れるかを考えるといいな、と思っています。ヤマハ発動機も海外売上高比率が9割の会社なんで。


変化を覚悟して受容する


 本田 シリコンバレーにあえてラボを作られたの理由は。

 西城 シリコンバレーは米国だと思っていなくて、世界に対してインフルエンスを発揮する中心地。そこから学ぶべきものはきっとあるだろうと。

 CVCをやりたいわけではなくて、ソニーさんみたいに自社にあるアイデアとかをちゃんと事業にできる自分たちなりのプロセスを持ちたいんです。非連続的なものに対しても、というのがモチベーションなんで。そこがほんとの狙いです。あとは本社と物理的、文化的距離を持ちたかった。

 本田 十時さんの目利きと日米の違いについての考えは。

 十時 (日米を)直接比較しないですね。私がCVC的なことをやり始めたのは2006年くらい。そこから中国のベンチャーに対して投資したりもしました。他のCVCと一緒にやったりとか。一番見てたのは経営者ですね。最後は経営者が会社をどう回していくかが極めて重要なので。

 ベンチャーですから必ずピボット(事業転換)するんですよ。最初のアイデアと事業計画でそのまま大きくなったという会社はまずない。当時の中国でいうと半年後に別の会社になっていたりとか普通にありましたから。変化をある程度覚悟して受容する。

 コミュニケーションは私自身が日本人なので、経営者を見る目線でいうと、感覚的には日本のベンチャーの方が楽です。海外になると、深いところまでで理解するのは割と難しい。いろんな人の意見を聞いたり、ほかのCVCと一緒にやるのも有効だと思います。

 本田 どのような視点で経営者を見るんですか。

 十時 基本は自分事としてやっているかどうか、ハンズオンでみれているか、ディテールまで理解しているか。それはベンチャーだからというわけでなく、トップなり責任者は自分が全部把握しているのが普通なんで。

 何を目指しているかという志の高さも注意して見ます。そうじゃないと、ちょっと成功すると、結構崩れてしまう人が多いんですよ。今はベンチャーも洗練されてきて、そういう会社は少なくなってきましたが。どんなに成功しようと、満足せずもっと成長してやろうというマインドセットを持ち続けられる人かどうかを重要視しています。

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明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役デジタルメディア事業担当
今日、自分が小さい頃からお世話になった企業経営者の「お別れの会」に出てきた。40代で独立、現在は石川県内でもトップクラスの収益力のある企業に育てあげた。式次第に故人の語録が記されていた。いくつか紹介したい。「会社は本業で儲けろ」、「経費削減は最終手段である」、「古い商品の技術やノウハウは価値のあるうちに売れ」、「顧客を大事にするのは当然だが、サプライヤーや工事業者も同じように大切にしないといけない」、「販売価格は末端商品の価値をみてつけよ。原価計算の積み上げで決めるな」。学生時代を過ごした神戸高等商船学校航海科(現神戸大学海事科学部)では軍隊予備群として非常に厳しい指導を受けた世代。昭和2年生まれだが、国際感覚を持った正真正銘のアントレプレナーだった。

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