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自動運転事故で自動車メーカーはどこまで責任を問われるのか

まず裁判の争点は設計欠陥の有無。わき見運転しているCMは格好の的に

日産「機能の限界が運転者にわかりやすく伝わるようにした」


 日産自動車は13日、高速道路の単一車線に対応した自動運転機能を、8月下旬に発売するミニバン「セレナ」の全面改良モデルに搭載すると発表した。「走る・曲がる・止まる」の基本動作を自動で行う機能で、渋滞時に対応したのは日本車メーカーとして初めて。同機能は高級車で商品化されているが、普及価格帯としては業界初の商品。自動運転機能の普及に弾みが付くか注目される。

 同日横浜市内で開いた発表会で坂本秀行副社長は「運転がうまい人が運転しているような自然で快適なレベルにできた」と自動運転の精度の高さをアピールした。渋滞中の先行車に追従して停車や発進し、先行車が車線変更したり、他レーンからの他の車が割り込んだりする時にも対応する。単眼カメラで道路や交通状況を認識し、イスラエルモービルアイと開発した画像解析技術を採用した。

 価格は後日発表するが、中村公泰副社長は発表会で「300万円を切る計画」とした。同様の機能は高級ブランド「メルセデス・ベンツ」や「BMW」などですでに商品化が先行しており、普及価格帯では初の商品となる。

 日本車では富士重工業が先行しているが、渋滞時のような低速時には対応していない。日産としては普及価格帯でも渋滞時の運転負担を和らげる機能をつけて拡販につなげたい考え。2017年に欧州でスポーツ多目的車(SUV)「キャシュカイ」に搭載し今後米中へ拡大する計画だ。

 自動運転機能の開発競争が激しさを増す中、5月に米テスラ・モーターズの車種で「オートパイロット」中に死亡事故が起きた。背景に認識技術の限界や運転車の技術への過信が指摘される。

 日産の発表会で電子技術・システム技術開発本部の飯島徹也氏は「機能の限界が運転者にわかりやすく伝わるようにした」と強調。例えば西日が強く周辺認識がしにくい時は自動運転機能が利用できない設定にした。走行中にハンドルから手を離すと2段階で警告を発するようにもした。

 日産は今後2018年に複数車線に、20年には一般道に対応した自動運転技術を商品化する計画。技術の進化に伴って「運転者のやることは少なくなる」(飯島氏)。坂本副社長は「運転者の表情や動きを認知して運転に集中できているかチェックする仕組みが将来は必要になる」と指摘する。運転者と車の「インターフェース」の重要性がさらに増しそうだ。
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日刊工業新聞記者
日刊工業新聞記者
自動運転の実装を止めるには、裁判で安全対策について追及する方法があります。安全性をきちんと証明するには膨大なコストがかかります。単純に総走行距離の事故率が低くても、事故ごとに状況を細分化してその状況ごとの安全性を検証するとコストがかさみます。反対に自動運転を無理矢理実装させるには、自動運転する能力のある車体で人間が起こした事故に対して、自動運転AIを人間運転に変わる合理的な代替設計案として提案する方法があります。この場合、なぜ運転AIを採用しないのかメーカーが説明できないといけません。この2種類の裁判が並行して行われるとメーカーは対応に困ります。 (日刊工業新聞科学技術部・小寺貴之)

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