北海道新幹線3カ月。乗車率は徐々に向上も「札幌延伸」のジレンマ露呈
新函館北斗、「途中駅」の懸念から周辺の開発がスローペース
「二次交通の充実」課題
JTBがまとめた「2016年夏休みの旅行動向」によると、国内旅行の旅行先では、北海道が前年比0・8%増の6・9%、沿線となる東北が同4・1%増の12・1%となった。利用交通機関も新幹線が同1・9%増の15・3%となり、新幹線で北海道や東北へ出かけようと考えている人が増えていることが分かる。
また、日本旅行業協会(JATA)がまとめた、16年4―6月期の旅行市場動向調査においても、国内旅行の景気動向指数(DI)は、北海道が前期(1―3月)比21ポイント改善の5となり、北陸新幹線ほどではないにせよ、北海道新幹線の開業効果も徐々に現れ始めている。
北海道新幹線の停車駅である新青森―新函館北斗間には、途中駅として奥津軽いまべつ駅と木古内駅の2駅がある。奥津軽いまべつは青函トンネルの本州側の入り口「竜飛口」から約6キロメートルの地点にあり、津軽半島最北端の景勝地、竜飛崎が近い。新幹線開業まで津軽半島に行くには、新青森から在来線に乗り換える必要があり、アクセスが悪かった。だが、新駅のおかげで首都圏からも行きやすくなった。
(奥津軽いまべつ駅から観光バスを運行)
ただ、奥津軽いまべつも典型的な郊外の新幹線駅で、地域の需要に合わせて駐車場は備えているものの、新函館北斗と同様に公共交通機関が十分とはいえない。
こうした中、JR東日本では、青函DCの期間中、奥津軽いまべつから乗車し、青函トンネル入り口や記念館、「龍飛崎灯台」など、津軽半島の観光地を周遊できる観光バスを運行。首都圏から新幹線を利用し、奥津軽いまべつで降りて、周辺を回れる二次交通網を整備する。
観光素材の発掘と導線整備を
JR東日本の冨田哲郎社長は「新しい観光エリアを作り上げるDCにしたい」と意気込む。北海道新幹線は東京と函館という、点の移動で比べれば、現状ではどうしても航空旅客に勝てない。だが、ルートを線で見れば、沿線の各地で誘客のポイントが増え、魅力が増す。
沿線の観光素材の発掘と、それらをつなぐ動線を整備しながら育てていくことが、北海道新幹線を通じ地域経済の活性化を後押しするカギとなりそうだ。
(文=高屋優理)
日刊工業新聞2016年7月6日/7日