新薬メーカー、相次ぐ工場閉鎖の落とし穴

バイオ医薬品で出遅れた教訓をどのように生かしていくのか

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(沢井製薬に譲渡された田辺三菱製薬の鹿島工場=沢井製薬提供)

バイオ薬、構造改革が課題。海外勢への追随困難


 ただ、日本の製薬業界には大きな課題が横たわる。バイオ医薬品の製造ノウハウだ。「再生医療では絶対にバイオ医薬品の轍を踏めない」(経済産業省幹部)。

 近年、日本ではiPS細胞(人工多能性幹細胞)をはじめとする再生医療分野の研究開発が盛んだ。14年11月に再生医療関連の2法が施行され、製品の承認が従来よりも格段に早くなったなど、国が積極的に産業化を支援してきた。

 これは、日本の製薬会社が抗体などを活用したバイオ医薬品で出遅れたことを教訓にしている。厚生労働省の資料によると、14年の医療用医薬品世界市場における売り上げ上位10品目のうち7品目がバイオ薬。その7品目中、日本で創製されたものはゼロだ。経産省幹部の発言を裏返せば、バイオ薬で海外勢に追いつくのは困難ということになる。

 日本でバイオ薬の経験が豊富な新薬メーカーは、中外製薬や協和発酵キリンなど少数。当然ながら、新薬各社から受託をする立場の国内CMOもバイオ薬の知見があまりない。

 協和発酵キリンは71億円を投じて高崎工場(群馬県高崎市)に原薬製造棟を新設し19年に商用生産を始める。だが「自社製品の製造で手いっぱい。受託ができる見通しにない」(同社)。バイオ後続品については関連会社で受託をする可能性もあるが、新薬の受託は当分難しそうだ。中外も現時点では、所属しているスイス・ロシュグループ以外からの受託は行わない方針。

製造能力保持を


 野村総研の山田氏はこうした現状を踏まえ、「中堅メーカーがバイオ薬の開発品を他社から導入しても、どこで生産するのかが見えない」と指摘する。武田薬品工業やアステラス製薬のような大手は、生産設備も自力で整えられる公算が大きい。だが山田氏は中堅企業にその余力はなく、武田やアステラスが積極的に受託する可能性も低いとみる。

 そこで山田氏は複数製薬企業が出資する独立製造会社にバイオ薬の生産技術を集め、日本での製造能力を保持すべきだと提言した。だが業界からの反応は乏しかったという。「創薬研究についての不安の方が大きく、製造集約に関する発想がない」(山田氏)。

 製造技術の蓄積がないと、治験薬を適時に供給できず新薬発売が遅れるといった事態も懸念される。各社は創薬力の向上と並行し、工場の位置付けを見直す必要もありそうだ。
(文=斎藤弘和)

日刊工業新聞2016年4月6日

COMMENT

宮里秀司
出版局雑誌部
企画委員

日本の製薬会社が抗体などを活用したバイオ医薬品で出遅れた教訓をどのように生かしていくのか。また、創薬力向上と工場の位置づけをいかに見直すのかが問われています。

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