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ソニーのM&A戦略「過去、現在、そして未来」


構造改革を経たソニーの今後


 ソニーが16年1月29日に発表した15年4~12月期の連結決算は、売上高が前年同期比0.1%増の6兆2,816億円、営業利益が2.3倍の3,870億円、最終損益が2,361億円の黒字(前年同期は191億円の赤字)となった。4~12月期で営業利益が2,000億円を超えるのは8年ぶりとなった。

(過去10年間のセグメント別営業利益または損失)

 復活の先導役となっているのは、スマートフォンやデジタルカメラに用いられるイメージセンサー事業と、プレイステーションが主体のゲーム事業である。ソニーは各事業の位置付けを明確化し、これらの分野を「成長牽引領域」と位置付けている。

 特に世界シェア首位のイメージセンサーに関しては、15年7月に実施した公募増資などで得た4,200億円を原資に、生産能力を約5割拡大させるなど、積極的な設備投資を行っている。また、同年12月には東芝のイメージセンサー生産設備の買収を行い、集中的な投資を行っている。

 ようやく復調となりつつあるソニーではあるが、中国の景気減速懸念や資源価格の下落による新興国の購買力の低下、日本国内の景気減速懸念など外部のリスク要因は多い。また、東芝の不適切会計やシャープの経営支援要請(※)など、業界他社の波風は当分収まりそうにない。

(平井CEOとストリンガー前CEO)

 こうした環境下では、80年代に行った巨額買収のような大胆なM&Aは難しく、むしろ当面のソニーに求められているものは、リスクを極力回避した緻密な経営と、不採算部門を切り売りするM&Aといえるのかも知れない。

 今後、立て直しの経営から攻めの経営へと移行し、大胆なM&Aや革新的製品の開発などにより、かつて「世界のソニー」や「ソニー神話」といわれたように、再びソニーが脚光を浴びることを期待したい。
M&Aアーカイブス2016年03月16日
石塚辰八
石塚辰八 Ishizuka Tatsuya
かつてのきら星のごとき日本のものづくりの名門が揺らぎ、堕ち、消えかかっている。ソニーも例外ではない。直近では復活の兆しも見せるが、果たして活路を見出すことはできるのか。今後はものづくりではなく、ITを駆使した仕組みビジネスへの変換を求められるなか、ソニーはどう岐路の選択をするのか。中国など新興外資の軍門にシャープ同様下るのか。まったく新しい事業へと大きく舵を切るのか。これまでの同社のM&Aの歩みからそれを推測する。

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