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神戸製鋼所・UACJ…非鉄メーカーが注力、仮想空間の生かし方

神戸製鋼所・UACJ…非鉄メーカーが注力、仮想空間の生かし方

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非鉄メーカーがデジタル技術を使った事業紹介に力を入れている。UACJは仮想現実(VR)ゴーグルを使ったバーチャル工場見学を開発し、神戸製鋼所メタバース(仮想空間)を活用した溶接について学習できるコンテンツを公開した。危険を伴う現場でも安全で没入感のある体験を提供。各社はデジタル空間を活用することで、体験者に製造工程のリアルな感覚や規模感を伝えられるよう工夫を凝らしている。(岡紗由美)

神鋼 「街」を散策、溶接学習

神戸製鋼所は溶接の魅力をメタバース空間で紹介する「コベルコウェルディングバーチャルエクスペリエンス(KWVX)」を公開した。同社の溶接材料や溶接システムが、実際の現場でどのように使われるかをメタバース空間に表現。建設現場や工場、橋、船など溶接技術が活用されているさまざまな場所を見学できる。併せて溶接の基礎知識や種類、同社の溶接材料の特徴などを紹介する。

神戸製鋼所の溶接学習コンテンツ「KWVX」

KWVXは同社のホームページからアクセス可能で、利用者はメタバース内でアバター(分身)を選択し、街の中を自由に移動することができる。任意の場所を選択すると、作業現場に適した溶接方法や溶接ロボットを紹介する。VRゴーグルを用意し、溶接の感覚を“体験”できる機能も搭載した。利用は無料だ。

溶接現場は安全性の確保を目的に幕で覆って作業することが多い。このため溶接の様子を身近で知る機会が少ないとし、KWVXの開発に取り組んだ。同社のマーケティング担当は「溶接がさまざまな現場で使われていることを知ってほしい」と期待する。

UACJ 溶解炉などVR見学

一方、UACJはVRゴーグルを使ったバーチャル工場見学を開発した。第1弾はアルミニウム板製品を製造する福井製造所(福井県坂井市)で、製造工程をVRで映像化して体験できる。

UACJのバーチャル工場見学(溶解炉のVR映像)

溶解炉、スラブを作る鋳造機、熱間粗圧延、コイルヤード、自動車材仕上げラインの五つの製造工程を、説明文とともに2分半程度の映像にまとめた。180度の立体視映像にしたことにより、現物と同じ大きさや遠近感を体感できるようにこだわった。

今後は、各拠点のショールームで体験できるようにする予定。同社は「通常の工場見学ではなかなか入れないところも安全に見学できるポイントが魅力だ」(広報担当)とアピールする。

各社はデジタル技術を活用することによって、安全性の確保と事業や技術の魅力の発信を両立する。採用活動などにもつながる新たな情報発信の手段として、さらなる活用が期待される。

日刊工業新聞 2024年12月12日

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