月に人工重力居住施設…京大と鹿島が始動、共同プロジェクトの中身
京都大学は18日、月面での人工重力居住施設の実現に向け、鹿島と共同研究を始めたと発表した。月面での人工重力居住施設の構造や施工の成立性、居住性、人体への影響評価、閉鎖生態系の確立をそれぞれ研究する。地球上で実装につなげることも目標とする。複数のテーマの共同研究を同時並行で進め、2028年度に報告書をまとめる。
研究プロジェクトは、京大と鹿島の共同研究として進め、テーマごとに専門の京大教授陣が参加する体制を取る。必要に応じ、他の有識者の協力も得る。
共同研究では、人工重力居住施設の成立性、閉鎖生態系の成立性、地球上における過重力施設の実現性―の三つの確認を目的に掲げる。月面人工重力居住施設「ルナグラス」については建設方法、天体の重力と遠心力、気圧を踏まえた構造成立性、適正遠心力環境の人体に対する医学的見地からの影響評価、宇宙放射線の遮蔽(しゃへい)などを検討する。
また閉鎖環境での生態系の維持に必要な最低条件を追求するほか、地球上の過重力施設では回転体独自の課題に挑む。惑星間の人工重力移動手段として「ヘキサトラック」と呼ばれる月・火星人工重力ネットワークの実現可能性も検討する。
京大(京都市左京区)で開いた記者会見で、鹿島の大野琢也イノベーション推進室担当部長(宇宙)は「現代は宇宙居住の起点となる時代。人工重力(施設)が人類の悲劇を未然に防ぐ装置になるのではないか」と共同研究に取り組む意義を語った。
日刊工業新聞 2024年12月19日