高速道の通行止め短縮…高架橋「半断面施工」でゼネコンが競う独自技術
総額約5兆5000億円を投じ、日本全国の老朽化した高速道路の更新を進める東日本高速道路、中日本高速道路、西日本高速道路のNEXCO3社と首都高速道路(東京都千代田区)、阪神高速道路(大阪市北区)。今後工事が首都圏など交通量が多い地域へと進むにつれて、高架橋の片側2車線の1車線だけを通行止めにして工事する「半断面施工」へのニーズが高まる。ゼネコン各社は独自の工法を競っている。(福山支局長・清水信彦)
岐阜県多治見市。丘陵地と住宅地に囲まれた中央自動車道上り線の北市場高架橋で「床版」と呼ばれる高架橋のコンクリート製床板の半断面施工が12月7日まで行われている。この工事を受注したのが大成建設。武器になったのが、北川鉄工所と共同開発した「半断面床版取替機」だ。
特徴は最大幅4039ミリメートルと1車線に収まるコンパクトさ。全体が三つに分割する構造で、25トントレーラーに積載し全国に輸送できる。工事現場では補助クレーンなどを用いずに組み立てでき、床版を取り換えるごとに道路上を4輪で自走しながら作業場所を変えていく。
法的なクレーンに該当しないことも大きい。運ぶモノの吊り上げと移動を別の装置で行うため、規格上クレーンに該当しなくなった。切断した床版を二つの装置間でいったん持ち替える必要はあるが、クレーンではないことから設置時に労働基準監督署の検査が不要になる。従来のクレーンなら組み立て・解体に検査を合わせて6日かかっていたが、組み立て・解体だけのトータル2日で済む。
北市場高架橋の施工現場では、あらかじめ長さ2―2・2メートルに切断しておいた重さ約10トン、幅約5メートルのコンクリート製床版を吊り上げ、90度回転して搬出用のトラックまで運んだ。最大15トンまで取り扱い可能だ。
撤去後には工場で製造したプレキャスト床版を設置し、締結していく。北市場高架橋では昼間だけの施工で1日3枚分、6―7メートルずつ工事が進む。「検査なしで、組み立ててすぐ工事に入れる」(大成建設中部支店の山下裕司氏)ことは工期短縮に大きく寄与している。
半断面床版取替工法は、鹿島や清水建設、大林組、ピーエス・コンストラクションなどゼネコン各社が独自技術を競う。全国の高速道路更新の進捗(しんちょく)率はまだ半分程度。これからが各社の腕の見せどころだ。