日本製鉄・JFE・神戸製鋼…高炉3社の通期見通し、全社事業減益の背景事情
量から質へ 転換急ぐ
高炉3社の2025年3月期連結業績予想が7日出そろい、全社が本業のもうけを示す事業利益(神戸製鋼所は経常利益)で減益を見込む。国内外で鋼材需要が減少するほか、中国の余剰鋼材がアジアに流出し、海外市況の停滞も続く。原料価格の低下による在庫評価損も響く。各社は量から質への転換を急ぐ。
日本製鉄は売上収益と各利益段階を下方修正した。原料価格の低下に伴う在庫評価差の拡大により、事業利益は前回公表値から300億円減の6700億円を見込む。ただ、在庫評価差を除く実力ベースの事業利益では前回公表値の7800億円を堅持する。
森高弘副会長は下期の事業環境について「国内は(認証問題で落ち込んだ)自動車向けが回復する一方、建築や土木向けは人手不足や資材高騰で増えない。鋼材需要は相当厳しい状況だ」と述べた。一層の収益改善に向け、日鉄ステンレスの吸収合併など国内事業の再編を進めるとともに、成長投資を積極化する。
神戸製鋼所は売上高と経常利益を下方修正した。売上高は自動車分野を中心に販売数量が減ると予想。経常損益は販売数量減に、建設機械での価格転嫁の未達を見込む上、原料市況の下落で在庫評価影響が悪化する。木本和彦取締役執行役員は建機の価格転嫁の未達について「需給環境の悪化で、転嫁しづらい状態になっている」との認識を示した。
JFEホールディングス(HD)も売上収益と各利益段階を下方修正。事業利益は前回公表値から1000億円減少の1600億円を見込む。事業別では、主力の鉄鋼事業で同950億円の下振れとなる700億円と大幅に減る。国内では建設向け、海外では東南アジアで高金利の影響で自動車向け鋼材需要が減少する。
日刊工業新聞 2024年11月08日