カーボンフットプリント最大85%低減…東芝、リチウムイオン電池負極回収で新技術
東芝は6日、リチウムイオン電池(LiB)の酸化物負極を低コスト・低環境負荷で回収する技術を開発したと発表した。簡単な熱処理だけで回収するため、複雑なプロセスが不要となり、低コストでの再利用を可能にした。この技術で再利用した素材と未使用の「バージン材」との比較では、製品が廃棄されるまでの全排出量である「カーボンフットプリント(CFP)」を最大85%低減した。当面は電極の端材などを用いて再利用手法の確立を進める。
LiBのリサイクルでは正極材のコバルトやニッケルなどでは進んでいるものの、負極材として一般的な黒鉛の再利用は普及していない。長時間の使用による構造の変化や劣化による反応物の付着などが原因で、再生に必要なプロセスが複雑になるため、コスト面で課題だった。
東芝では、黒鉛を負極とする電池よりも高出力・長寿命なニオブチタン酸化物(NTO)負極の電池を開発している。東芝のNTOは安定した構造を持つことが特徴であり、黒鉛と比べて再利用しやすい。
熱処理だけで活物質(酸化還元反応に関与して電気を起こす物質)としての特性を維持したまま、NTOを接着する成分を分解し、容易に分離・回収できる。不純物を除去した後、そのまま再利用可能だという。
この技術で再生した電極で電池性能を比べたところ、新品と同等の97%以上の活物質容量を持ち、長寿命の確保を確認した。
日刊工業新聞 2024年11月7日