需要冷え込んでいるが…パナソニックがヒートポンプ暖房で欧州を攻める狙い
パナソニックは今秋から、欧州市場向けヒートポンプ暖房のラインアップを拡充する。イタリアやフランスでは暖房に加えて冷房も使える空調機器を10月中に、ドイツなどでは集合住宅や店舗向け大型業務用ヒートポンプ暖房を11月に発売する。ガス価格の下落や補助金政策の転換により欧州でのヒートポンプ需要は冷え込んでいるが、中長期的な市場拡大を見据え冷房やエネルギーマネジメントなど付加価値を高めて顧客を開拓する。
南欧向け製品として、出資先の伊イノーバの室内機をパナソニックのブランドで発売する。温度や湿度を熱交換器で調整するファンコイルユニットを搭載しており、冷房は部屋の空気と冷水の熱を交換して室温を下げる。
近年の気温上昇により、欧州でも冷房の需要が増えているという。住宅用エアコンは壁に配管の穴を開ける必要があるがファンコイルは開けずに済む。施工しやすい点を訴求する。
中欧の集合住宅など向けには業務用ヒートポンプ暖房を発売する。併せて、エネルギー制御技術に強みを持つ独タドとの提携により、ヒートポンプの温度制御を最適化するサービスも展開する。
欧州では化石燃料を燃やすボイラで温めた温水をラジエーターや床下に循環させる暖房が一般的だが、近年は省エネルギー性能が高く、再生可能エネも使えるヒートポンプへの置き換えが進む。
足元では、一時は高止まりしていたガス価格が下落し、各国政府の補助金も削減されたことで需要は減速している。パナソニックはチェコ工場の稼働率を一時的に落としており、三菱電機は英スコットランド工場の人員削減に踏み切る。ただ、脱炭素の推進によりヒートポンプの市場は中長期的には拡大する見通しだ。パナソニックがイノーバやタドと提携したのも欧州での販売を強化するためで、需要回復を見据えた販促や投資の継続が成長のカギを握る。
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