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日本ゼオンが川崎を刷新、“研究開発型工場”への進化を目指す背景事情

日本ゼオンが川崎を刷新、“研究開発型工場”への進化を目指す背景事情

DXで生産効率化を進める(日本ゼオン川崎工場)

日本ゼオンが川崎工場(川崎市川崎区)の生産効率化に取り組んでいる。隣接する総合開発センター(同)との間に、2026年度に新たな「共創イノベーション施設」を完成する。デジタル技術も活用しながら、製品設計から生産技術の作り込みといった事業化推進のサイクルを高速化。競争力を強化する“研究開発型工場”への進化を目指す。(渋谷拓海)

日本ゼオンの川崎工場は、1959年に国内で初めて合成ゴムの量産を始めた。現在も自動車のベルトやホースなどで使う耐油性・耐熱性に優れた特殊合成ゴムをはじめ、リチウムイオン電池(LiB)向け材料などを生産している。配管などの設備がコンパクトに収まっているのが特徴だ。7万5500平方メートルの敷地で、約200人が2交代制で働いている。

このところ注力しているのが、デジタル変革(DX)による自動化だ。各所にセンサーやカメラなどを取り付け、コントロールセンターで監視・制御している。中には59年の操業開始時から現役の設備もあるが、渡辺誠工場長は「自動弁に入れ替えるなどの更新を積み重ねてきた。装置はガラっと変えられないが、人間の五感で見ていたものをコントロールして省人化する」と狙いを話す。

共創イノベーション施設のイメージ

稼働状況の管理はコントロールルームのボードオペレーターと、屋外のフィールドオペレーターで手分けして担当している。約30年前には7人で見ていた作業が、現在は1人で対応できるようになったという。

こうした取り組みの背景には、先行きの人手不足対策と事業化を早める狙いがある。建設中の共創イノベーション施設には、車で約15分と近い羽田空港などを経由し全国の顧客らを招く。DXでさまざまな情報を集約・蓄積しておくことで得意な少量多品種生産の効率を高め、顧客の要求に迅速に応えたい考えだ。

足元で上昇し続けている生産コストへの対策にも乗り出した。DXと並行し、乾燥工程での処理能力の向上や、生産品種の切り替え時間短縮などを進めている。渡辺工場長は「コストダウンがなかなか追いつかないが、不良品を抑えればムダなコストの低減になる」と意気込む。

川崎工場では定期修理の時期を避ける形で、26年度末をめどにコントロールルームを共創イノベーション施設に移す。ケーブルのつなぎ直しが必要になるため、全社のDXを担う総合開発センターと連携して対応する。

同工場は日本ゼオンの生産拠点の中で最も小規模な半面、配管などの設備の密集度合いが比較的高い。周囲に拡張余地がなく、上空には羽田空港に離着陸する飛行機が飛び交っているためだ。首都圏ならではの環境で磨いた生産のノウハウは、他の工場とも共有・展開していく方針だ。

日刊工業新聞 2024年10月3日

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