引き合いあまりに弱く…国内の鋼材相場、需要期なのに先安感
国内の鋼材相場は「秋需」と呼ばれる需要期にもかかわらず、先安感がある。安価な輸入材の入荷に加え、引き合いがあまりに弱く、一部の流通業者が需要家の値下げ交渉に応じており、これが先安感につながっている。価格表を変えないまでも、数百円程度下げるジリ安状態で販売に踏み切る流通業者が散見されるようになってきたという。引き合いが回復する兆しが見えない中、今後も弱含みの状態が続きそうだ。
流通業者によると、熱延薄板は国内材に比べて2割ほど安い中国メーカー製の薄板が日本市場に入荷する状態が依然継続している。中国メーカーは中国内の需要が落ち込む中、中国やアジア地域に比べて高値水準にある日本の鋼材市場に照準を合わせ、販売攻勢をかけているところに一因がある。
厚板についても同様だ。別の流通業者によると、韓国製の厚板が国内材に比べて数千円程度安く、「安価な厚板に流れる需要家もちらほらいる」(流通筋)。特に西日本地域では、その傾向が顕著だとの見方も一部にある。こうした状況が続くと、鋼材メーカー、流通業者ともに採算が取れなくなることへの懸念が膨らんでいきそうだ。
「引き合いが回復すれば」という関係者の期待も虚しく、依然として引き合いは弱い。国土交通省の建築着工統計調査によると、7月の全建築物の着工床面積は前年同月比5・8%減の873万平方メートルと、9カ月連続で減少。建築現場の人手不足や資材費高騰による建設計画の見直し、工期遅れの影響で、この先も期待薄という見方が関係者内では大勢を占める。こうした状況下、需要家から流通業者に値下げに関する相談が持ちかけられているという。厚板の流通業者は「10件中5件くらいは『安くしてくれ』と言われるようになってきた。そのため、相談に応じて少し安価で売るけケースもある」と明かす。これまで、秋は鋼材の最需要期といわれてきた。ただ、このところ、秋に需要が伸びず、「今年も秋需は期待薄だ」(熱延薄板の流通業者)との声が相次いでいる。
日刊工業新聞 2024年09月07日