設備投資3年間450億円、JMUが当初計画に3割上乗せする狙い
ジャパンマリンユナイテッド(JMU、横浜市西区、灘信之社長)は、2023―25年度までの3カ年の設備投資額を当初計画に比べて100億円上乗せし、450億円程度に設定した。国際海運の脱炭素が進む中、液化天然ガス(LNG)やアンモニア、メタノールなどクリーン燃料に対応した新造船の生産性を15%向上させる。燃料多様化や老朽船舶の代替などで新造船の需要は広がる。鋼材高は逆風だが、外航船を主体とする国内造船所は円安も追い風に受注を伸ばしており、設備投資の機運が高まる。
JMUは大型のバラ積み運搬船やコンテナ船、タンカーの建造を主力とし、主力3事業所ともに竣工ベースで27年末ごろまでの手持ち工事を抱えている。足元では重油を燃料とする従来型の新造船が多いが、メタノール焚(だ)きを中心に受注が拡大しており、27年度には温室効果ガス(GHG)削減を目指した新燃料船比率は6―7割を占める見込みだ。
新燃料船は艤装(ぎそう)が多く、従来に比べて工程が伸びる。JMUは当初、25年度までの3カ年で350億円の設備投資を計画していたが、3割程度上乗せして生産性を向上し、年間の建造能力を維持する狙いだ。
大型バラ積み運搬船を主力とする津事業所(津市)ではドッククレーン1基の吊(つ)り能力を200トンから800トンに切り替える。完了後は同800トンクレーン2基で新燃料タンクやサイズの大きなブロックを搭載できるようになる。
一方、超大型タンカー(VLCC)を主体とする有明事業所(熊本県長洲町)では艤装工事用の岸壁を新設する。有明事業所ではアンモニア燃料アンモニア輸送船の建造も決まっている。呉事業所(広島県呉市)の新宮地区には新燃料船向けのタンク製作工場を建設する。
国際海事機関(IMO)は国際海運のGHGを50年ごろまでに実質ゼロにする目標を掲げる。ゼロエミッション船への代替などにより相応の新造船需要が生まれる見通し。政府はGX(グリーン・トランスフォーメーション)経済移行債を活用してゼロエミ船舶などの国内生産基盤強化を支援する。