日本製紙・王子HD…製紙メーカー、子会社売却が相次ぐ背景
製紙各社が子会社を相次ぎ売却する。日本製紙は建材事業を手がける大昭和ユニボード(宮城県岩沼市)を10月1日付けで売却。王子ホールディングス(HD)は9月1日付で印刷事業を展開するチューエツ(富山市)を手放す。紙の需要が減少するなど製紙業界の事業環境が変化する中、事業構造を最適化することで成長分野に経営資源を集中させる狙いがある。
日本製紙は大昭和ユニボードの全株を、不燃建材を製造・販売するエーアンドエーマテリアル(横浜市鶴見区)に譲渡する。譲渡額は非公表。大昭和ユニボードは1973年に操業を始め、環境負荷の少ない低圧メラミン化粧板「ユニボード」を住宅・建築・内装メーカーなどに供給してきた。今後、人口減少による需要減少を見込み、不燃建材で高い技術力と豊富な販売網を持つエーアンドエーマテリアル傘下での成長が適切と判断した。
王子HDは子会社の王子マネジメントオフィス(東京都中央区)を通じ、9月1日をめどにチューエツの全株をタイヘイ(千葉県匝瑳市)に売却する。チューエツの2024年3月期の売上高は73億3000万円。王子HDも、印刷事業に注力しているタイヘイへの売却がチューエツの成長戦略上で最善と捉え、手放すことを決めた。
製紙各社が相次ぎ子会社を売却するのは、業界を取り巻く事業環境が変化しているためだ。中でもデジタル化の流れを受け、グラフィック用紙などの紙の需要が低迷。日本製紙連合会が公表した24年1―6月の紙・板紙の国内出荷量は、前年同期比5・4%減の978万4000トンとなり2年連続で減少した。
このため各社は事業構造の見直しを進めており、子会社売却もその一環となる。今後は需要増が見込まれるパッケージ分野や木質素材を使った新素材の開発など成長領域に経営資源をシフトし、収益力を高める方針だ。