半導体後工程向け「i線露光装置」生産倍増へ、キヤノンの勝算
キヤノンは半導体の高密度化を実現する「先端パッケージ」の需要増を受け、後工程向けにi線露光装置を増産する。2025年度に後工程向けi線露光装置の生産台数を最大80台規模と24年度比で倍増する。IT大手などが生成人工知能(AI)サーバーへの投資を増やす中、台湾積体電路製造(TSMC)などは高密度実装が必要なAI半導体の製造能力を増強している。同装置で先行するキヤノンは、AI半導体の後工程における旺盛な需要を取り込む。
AIサーバーで使われるデバイスの後工程では、メモリーやロジックなど機能が異なる複数のチップを組み合わせて高密度化し、あたかも一つのチップとして機能させる「先端パッケージ」の技術が進展する。すでに米エヌビディアの画像処理半導体(GPU)など、高性能なコンピューターの一部にはこうした後工程技術が適用される。
AI半導体については高密度にするため、GPUなどと、DRAMを複数積層した広帯域メモリー(HBM)を密接に接続する。この際、後工程向け露光装置はDRAM同士を接続するバンプを形成したり、HBMとGPUを接続する再配線層を形成したりするのに用いる。
足元ではAI半導体の需要が高まっており、TSMCの24年4―6月決算では売上高に占めるAIなどハイパフォーマンスコンピューティング(HPC)の割合は50%を超えた。旺盛な需要を捉えるため、半導体受託製造(ファウンドリー)はAI半導体向け後工程への投資を進めており、キヤノンもこの流れに乗る。
i線露光装置は波長が365ナノメートル(ナノは10億分の1)で、前工程ではパワー半導体などで利用される。
現在、同社は半導体製造装置の主力生産拠点である宇都宮事業所(宇都宮市)に新工場を建設中で、25年から稼働する。後工程に加え、今後も需要が伸びるパワー半導体向けに露光装置を増産する。
台湾の調査会社トレンドフォースによると、26年のAIサーバーの市場規模は22年比2・8倍の236万台超と予測する。AIサーバーの普及に伴い高性能な半導体の需要も拡大し、後工程の生産性向上が重要になる見通しだ。
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