大型基幹ロケット「H3」のエンジン用部品手がける、金属加工メーカーが磨きかける技術力
川崎製作所(茨城県ひたちなか市、川崎達郎社長)は、創業60年目の金属加工メーカー。2006年から航空機エンジンの部品加工を始め、現在は大型基幹ロケット「H3」のエンジン用ターボポンプ部品製造も手がける。近年はコロナ禍の航空機需要の低迷などによる業績悪化も経験したが、24年度中にコロナ禍以前の売上高まで回復する見込み。川崎達郎社長は「航空宇宙産業への貢献度を高めたい」と意欲的で、技術の向上に余念がない。(茨城・石川侑弥)
川崎製作所は金属部品同士の隙間を封止するメタルシールなどを製造する。納めた部品は、米ゼネラル・エレクトリック(GE)製の航空機エンジンなどに搭載する。日本国内の大手航空機エンジン部品メーカーに製品を納め、最終的に米ボーイングの大型旅客機などの一部として世界中を飛び回る。このほか、エンジン部品として翼面形状のブリスクなども加工できる。
航空産業向けは、先代社長の川崎修氏が展示会で大手エンジン部品メーカーの幹部と出会い、受注が始まった。部品の穴開けや粗加工のみの受注から始めて実績を積み、12年から完成品として部品を納める。早期の注文の獲得を目指し、地道な顧客訪問を繰り返した。川崎達郎社長は「“種まき”の時期だった」と当時を振り返る。16年にはロケットエンジン向けターボポンプ部品の製造も受注し、宇宙分野への参入を果たした。
一方で航空宇宙分野特有の悩みも多い。特にエンジン周辺は高温になりやすく、部品の耐久性が求められる。そのため材料にも難削材を使う。加工が難しい材料でより高精度を要求される分野だ。品質保証の観点でも、厳格な管理の下で製造から検査まで行う。調整と検討を重ねて、安定した品質を保つ。
航空宇宙分野の受注を増やすために、技術開発を続けて顧客からの相談に向き合い、高いレベルの加工に挑む。現在、主力のメタルシールの製造は、高精度数値制御(NC)旋盤加工の技術を駆使して製造している。今後は、複数台保有している5軸複合加工機も活用しながら、より加工が難しく付加価値の高い、ブリスクや羽根車形状のインペラなどの製品の受注を増やしたい考え。
社員の技術力向上にも力を注ぐ。熟練度の高いベテラン社員が率先して加工を受け、その技術を若手に伝承する。9月には金属加工に関わる国家資格取得を後押しする社内制度を整備する。社員の業務意欲を向上させる狙いで、就業時間内に1カ月あたり10時間程度、専用の学習時間を確保するほか、受験にかかる費用を会社で負担する。退職した元社員に声をかけ、指導員として迎える。現在は管理職の2人が、8月の検定に向け、制度を試験的に運用している。
経済産業省の「地域未来牽引企業」にも認定された川崎製作所は、地元製造業の中心的な担い手だ。「レベルを上げて、皆さまから頼られる会社に」(川崎社長)と決意する。