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支援業務経験し転身…みらい創造機構が本格化、「客員起業家制度」とは?

東京工業大学関連のベンチャーキャピタル(VC)のみらい創造機構(東京都港区、岡田祐之社長)は、大学発スタートアップの経営人材を育てる「客員起業家(EIR)」制度を本格化した。同社が兼業やフルタイムで雇用した人材が、起業前後の多様な支援業務を経験した上でスタートアップ側に転身する。今春から医療系コンサルタントやデータセンター事業のリーダー、起業経験者など6人の布陣で強化した。

みらい創造機構のEIR制度の仕組み

みらい創造機構はゼネラルな経営者と、ファインナンスや戦略などスペシャリストの役員と、両タイプを育成する。対象者は複数の大学発スタートアップ案件でシーズ探索やネットワーク構築、経営戦略策定などを経験。発明者との相性を踏まえ、特定のスタートアップのトップや各担当役員に転身する。VCの投資経験から資金調達ポイントを知るといった独特の力が付く。

EIRは米国で浸透している。経営者不足のスタートアップに送り込むEIRをVCが育成すれば、上場に至る成功例が増えて、利益確保につながるためだ。同社は経済産業省などのEIR事業に採択されている。

1年間のフルタイム契約の一人は、三菱商事のデータセンター事業から合弁会社設立を主導した経験を持つ。大学の複数技術を活用した起業を準備中だ。もう一人は病理専門の医師で、外資系コンサルティング会社の経験がある。支援スタートアップの資金調達が難航したため、事業戦略の転換に取り組んでいる。

また大手製薬会社、大学発創薬スタートアップを経て、別の創薬スタートアップの上場で経験を積んだ取締役は、次の挑戦を創業者・経営者として行うため、みらい創造機構では兼業で活動する。その他の3人も起業経験者だ。業務を通じて、みらい創造機構とウィンウィンとなる点が注目されそうだ。

日刊工業新聞 2024年6月19日
山本佳世子
山本佳世子 Yamamoto Kayoko 編集局科学技術部 論説委員兼編集委員
みらい創造機構は以前の記事で書きましたが、大手企業などからの出向者受け入れも多数、手がけています。大手機関がVB投資をするセンスなどを、VCである同社にて磨くのです。最近はメーカーだけでなく茨城県庁や芙容総合リース、TMI総合法律事務所などからの出向もあって、多様化に目を見張ります。同社ならではのネットワークがこの先、威力を発揮してくれることでしょう。

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