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東京農工大など組成、国立大発スタートアップ向けファンドが掲げる戦略の中身

東京農工大など組成、国立大発スタートアップ向けファンドが掲げる戦略の中身

東京農工大は国際産学官連携によるエネルギー・食料事業開発に取り組む(右から2人目が千葉学長)

東京農工大学とBPキャピタル(東京都中央区、松多洋一郎社長)などは、国立大学発スタートアップ(SU)向け民間ファンドを核としたエネルギー・食料に関する事業開発戦略を公表した。同大が設立予定の完全子会社「Dejima」(仮称)がSUの事業コンサルティングや研究者雇用を支援し、同ファンドにSUの収益を還元する。同大に加え、東京・多摩地域の4国立大学発の案件を対象とする。

東京農工大とBPキャピタルが手がける「TUATファンド」は国立大の民間ベンチャーキャピタル(VC)出資を認める規制緩和により組成された初のファンド。文部科学省は9月に同大の出資を認可した。アステナホールディングス、西武信用金庫(東京都中野区)、QRインベストメント(金沢市)も出資する。出資額は非公表。

公表した戦略では、同ファンドが同大発SUや企業とのジョイントSUに投資し、Dejimaが事業コンサルティングや大学の教員・博士学生の雇用・派遣を実施。事業の収益を大学などのファンド出資者に環流する仕組みを確立する。既に畜産の受精卵の製造・販売や、農業生産を踏まえたバイオエネルギー開発などの案件が動いている。

同ファンドは電気通信大学、一橋大学、東京学芸大学、東京外国語大学関連の事業もカバー。東京農工大の千葉一裕学長は「大学の事業活動の収益から出資する。最初は小規模だが、リターンを得て大きくする」としている。

日刊工業新聞 2023年11月7日
山本佳世子
山本佳世子 Yamamoto Kayoko 編集局科学技術部 論説委員兼編集委員
今回のベンチャーファンドは多摩地域の4大学も支援するとのこと。外部資金導入で実は驚きの個性を見せている東京学芸大や、情報通信にパワーを集中させる電通大はもちろん、人文・社会科学系でレベルの高い東京外大や一橋大も…となれば、相乗効果に期待が高まります。気になるのは千葉学長をはじめ、東京農工大の近年の活動はかなり尖った、アグレッシブでなものだということです。そのため連携の融和はうまくいくだろうか、と少し気になります。ですが、他の国立大学(地方総合大学に小規模大学がくっつきがち)にはないモデルだけに、挑戦を応援したいです。

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