月面の搬送用など提案…産総研が開発、容易に作れる「這うロボ」の性能
産業技術総合研究所の山本知生研究員と神村明哉研究チーム長は、レーザーカッターで作れる這(は)うインフレータブルロボットを開発した。レーザーカッターのレーザーをプラスチックフィルムの溶着に利用する。走査パターンを入力しフィルムを積層すると製作できる。製作機器の限られる月面などでの搬送ロボに提案していく。
プラスチックフィルムをレーザーカッターにセットし、裁断や溶着で構造を作る。空圧で駆動するための流路や、膨らんで一定方向に曲がる機構などを作り込める。レーザーカッターは試作用に普及している。パターンを設計すれば機構を組み合わせるようにロボットを構成できる。
実際にミミズのような蠕動(ぜんどう)運動で物を運ぶシート状のロボットを開発した。1・2キログラムの荷を秒速3・3ミリメートルで運べた。荷が3・9キログラムだと秒速は1・1ミリメートル。月面や極地、海上など、製作機器の限られる環境での自動化を想定する。
プラスチックフィルムはロールツーロールの量産プロセスとも相性がよい。ロール材を貼り合わせながら溶着すれば大量生産できる。ビニールハウスのような大きな構造物に蠕動運動や羽ばたき動作、変形機能を持たせることも可能。雪下ろしなどが簡単になる。
今後、作れる構造や形態を増やしていく。専門家でなくても作製できるよう加工手順を簡単にする。家具やロボを自分で設計して作ると、要求品質や機能が過大になりにくい。
日刊工業新聞 2024年06月17日