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鉄道業界の課題を打破…京王電鉄、設備管理DXで技術系部署の連携強化

鉄道業界の課題を打破…京王電鉄、設備管理DXで技術系部署の連携強化

運転席から撮影した映像からRPA技術を使って鉄道設備のデジタル台帳を作成

京王電鉄はデジタル技術を活用し、技術系部署間の連携を強化する。2024年度中に別々の部署が管理している土木構造物や電気設備の情報をデジタル情報基盤上で統合して運用し、更新工事や災害時の対応を円滑化する。デジタル変革(DX)により業務を効率化し、人手不足対策にもつなげる。(梶原洵子)

京王電鉄は設備管理の高度化のため、3月までに架線を支持する電力柱や踏切内の異常を知らせる特殊発光信号機など16種類・約8000の電気設備のデジタル台帳を作成した。これまでの起点からの距離を示すキロ程表での管理に対し、位置情報などの新たな情報を付与した。24年度中にこのデジタル台帳を同社独自の地理情報のデジタル基盤「K―PaS」に取り込む。

K―PaSは地図上に設備の位置や補修履歴などを落とし込んだものだ。23年から主に土木部門が使い、工事に関する情報収集や報告書作成などに活用している。これに電気設備の情報を加え、設備更新工事の準備や災害時対応の効率化に役立てる。「工事の際、別部署が管理する設備を把握し、影響などを調べられる」(同社担当者)とし、情報基盤を中心に技術系部署間の連携を深める。

電気設備の情報を地図に反映し、工事などの効率化につなげる

災害時の対応も同様で、現場へ向かう前にチェックすべき設備を確認できる。

電気設備のデジタル台帳化には、古河電気工業などが提供するデジタル・ソリューション「てつてん」を使った。先頭車両に取り付けているカメラで録画した映像を、RPA(ソフトウエアロボットによる業務自動化)技術で解析し、必要な情報を自動的に台帳化した。同技術を全路線に採用したのは京王電鉄が初めてだという。

鉄道業界では特に技術系人材の採用が課題となっており、「DXで問題を打破したい」(同)という狙いもある。少ない人数で安全基準を守って維持管理できる保守作業のDXに取り組む。デジタル基盤での施設や設備の情報の管理はこの一環だ。これとは別に映像解析による設備の異常検知技術なども進化しており、新たな技術を取り込み、設備管理の効率化を目指す。

日刊工業新聞 2024年6月13日

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