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「ジャパンSDGsアワード」受賞、廃プラからエネルギーを作り出すシステムの効果

「ジャパンSDGsアワード」受賞、廃プラからエネルギーを作り出すシステムの効果

首相官邸でジャパンSDGsアワードの表彰を受ける相馬エルコム社長(左から2人目)

エルコム(札幌市北区、相馬嵩央社長)は2021年、政府から「ジャパンSDGsアワード」の特別賞に選ばれた。持続可能な開発目標(SDGs)を冠した数々の表彰制度の中でも、最も栄誉ある賞の一つだ。

プラスチック廃棄物からエネルギーを作り出す「e―PEPシステム」が評価された。工場で使い終わった緩衝材や包装フィルム、市場の発泡スチロール製魚箱、食品トレーなどを粒状のペレット燃料に加工する装置と、ペレットを燃焼させて蒸気や温水を発生する小型ボイラで構成する。企業は社内で発生したプラ廃棄物を社内で有効活用でき、化石燃料の使用を減らせる。

1991年創立の同社は開発型の中小企業だ。95年、北海道で初めてコインパーキングを実用化した。融雪機能の開発が決め手だった。その後、発泡スチロールの減容機を開発した。圧縮して容積を小さくすると輸送効率を向上でき、リサイクルを増量できる。

廃プラスチック由来の燃料を燃焼するボイラ

e―PEPシステムの開発は2007年にさかのぼる。海で使い終わったフロート(浮き)の燃料化を検討したが、燃焼に関連した知見がない。ボイラメーカーに声をかけたが、当時は小型ボイラの開発は難しいと難色を示された。

事業企画室のドイル千賀子室長は「自社開発するしかなった。ストーブの燃焼を見ながら勉強した」と振り返る。約9年後の16年、ボイラが完成した。すると17年末、中国がプラスチック廃棄物の輸入を規制。行き場を失ったプラ廃棄物の処理が問題となり、「問い合わせが急増した」(ドイル室長)。

17年にコープさっぽろ(札幌市西区)がシステムを導入し、21年には長崎県対馬市に燃料化装置を納入した。海岸に漂着したブイを現地で燃料化する。23年には一般社団法人「クリーンオーシャンプロジェクト」を設立し、リコーなど異業種と連携してプラスチックの資源化を推進する。サーキュラーエコノミー(循環経済)への転換が急がれており、中小企業が生んだ製品に脚光が集まる。

日刊工業新聞 2024年5月29日
松木喬
松木喬 Matsuki Takashi 編集局第二産業部 編集委員
使っているうちに、どうしても再生が難しくなるプラスチックがあります。廃棄物すると焼却施設までの運搬でCO2が発生します。社内で燃料にすることで化石資源の節約になります。

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