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「原子力」「防衛」伸長事業に…三菱重工が新中計、売上高5.7兆円へ

三菱重工業は28日、火力発電向けガスタービン、原子力、防衛の3事業を柱とする2027年3月期までの3カ年中期経営計画を発表した。3事業を中心に前中計比2倍弱の6500億円を投資。水素などの新エネルギー事業も加えた重点領域で、3年間で1兆円以上の売上高の上積みを見込む。前中計で築いた財務基盤を生かし、強みを伸ばすポートフォリオ経営を推進。27年3月期に売上高で24年3月期比21・2%増の5兆7000億円以上、事業利益率8%以上を目指す。

三菱重工業の売上高と事業利益

「事業成長と収益力のさらなる強化を両立させて三菱重工グループを発展させていきたい」。同日会見した泉沢清次社長は意気込みを示した。各事業の強化に向けて3年間で総額1兆2000億円の投資を計画する。

自社の果たすべき役割を「脱炭素への貢献」と「国家安全保障への貢献」と定義。ガスタービン・コンバインドサイクル(GTCC)、原子力、防衛を伸長事業に位置付ける。水素・アンモニア、二酸化炭素(CO2)の回収・貯留・利用(CCUS)を成長事業とし、バリューチェーン構築に取り組む。

これらの領域に対する投資により、全社売上高の約半分に当たる2兆6000億円を目指す。

GTCC事業では設備、人的資源の増強などにより事業遂行能力を高めるほか、脱炭素社会への技術開発を推進する。泉沢社長は「トップシェアを堅持して少しずつでも伸ばしたい」と意気込む。

新中計について説明する泉沢社長

世界的に原子力発電設備の需要が増大しており、「海外向けの機器の輸出も見込んで取り組む」(泉沢社長)方針。人材の拡充による供給能力強化、老朽化設備の更新や生産効率向上に向けた機器の導入などの投資を実施する。

防衛分野ではスタンドオフ防衛、次期戦闘機開発など事業拡大局面にあり、社内の人的資源の最適活用を含めて人員を約3割増員。加えて、開発・生産能力を増強する。また、将来的な防衛装備の無人化など、将来に備えた次世代要素技術開発にも着手する。

技術・人的基盤も強化する。30年に2万人強のデジタルイノベーション(DI)人材の育成に取り組む。知財戦略に基づくライセンス網構築による収益化機会の拡大を図る。


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日刊工業新聞 2024年5月29日

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