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無酸素でアンモニア活性、東工大など人工触媒を発見

東京工業大学の中村龍平教授らは、酸素分子を使わずにアンモニアを活性化する人工触媒を発見した。37種類の鉱物材料の触媒活性を調査。アンモニアと亜硝酸から窒素ガスを作り出す「アナモックス反応」について、硫化銅が特異的に触媒作用を示すことが分かった。アンモニアを活性化する新たな反応経路を見いだしたことで、排水処理技術の開発やアミノ酸や核酸塩基などが重要な役割を担う生命起源の研究の促進につながる。

理化学研究所との共同研究。成果は英ネイチャー姉妹誌に掲載された。

37種類の金属系の硫化物や酸化物、水酸化物の触媒活性をガスクロマトグラフィー質量分析計で分析。硫化銅だけがアンモニアの生成に活性を示した。アナモックス反応の触媒活性を示した硫化銅をX線回折とラマン分析で調べると、天然に存在する2価の銅イオンを含む硫化銅鉱物「コベライト鉱物」と同じ構造であることが明らかになった。硫化銅を使うことでアナモックス反応の途中で生成する反応性が高く不安定なヒドラジンを作れるか検証したところ、中間体として検出でき窒素分子に酸化することを確認できた。

アナモックス反応は1995年に排水処理場に生息する細菌で発見された。地球海洋における固定窒素の50%近くの除去に関与する重要な反応で、世界中で30年近く研究されてきた。だが、アナモックス反応を駆動できる人工触媒は見つかっていなかった。

日刊工業新聞 2024年05月27日

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