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“企業文化の継承者”、ダイキン新社長の素顔

“企業文化の継承者”、ダイキン新社長の素顔

握手する竹中次期社長(右)と十河社長

ダイキン工業は9日、竹中直文専務執行役員(60)が社長兼最高執行責任者(COO)に昇格する人事を発表した。十河政則社長兼最高経営責任者(CEO、75)は会長兼CEOに就く。6月27日の定時株主総会後の取締役会で正式に決める。30年にわたって経営をけん引してきた井上礼之会長(89)は取締役と会長を退任するが、グローバルグループ代表執行役員を継続し、「グループの求心力の要(かなめ)を担ってもらう」(十河氏)。

竹中氏は現在、人事・総務を担当しているが、技術者として空調の生産や企画に長く携わったほか、国内営業や調達、物流なども広く経験してきた。十河氏はこのタイミングで新体制への移行を決めた背景について、「井上会長が役員になって45年、社長になって30年で、(2024年に迎える)創業100周年の節目に、会長自身も含めて新しい体制になるのが今後のために良いという判断があった」と説明した。

ダイキンは同日発表した24年3月期連結決算で、売上高4兆円を初めて突破した。新体制には、井上氏を中心に培ってきた「人を基軸とする経営」をはじめとする企業文化や、先見性のある経営判断といったダイキンの強みを継承し、成長路線を継続することが求められる。

【略歴】竹中直文氏 86年(昭61)同志社大工卒、同年ダイキン工業入社。18年常務執行役員、21年専務執行役員。大阪府出身。

素顔/ダイキン工業社長に就任する竹中直文(たけなか・なおふみ)氏/“企業文化の継承者”

技術者として空調の生産や企画を長く経験し、リーマン・ショック後は国内営業の立て直しにも奔走した。井上会長や十河社長と同様に、人事担当を経ての社長就任となる。十河社長は「“人基軸経営”をはじめ、当社独自の強みを継承できる人物。誠実で人の話を聞き、行動に生かせる。生産、開発、販売など豊富な事業経験があり、新たな挑戦を現場に落とし込んで実行するCOOの役割に適している」と太鼓判を押す。

経営環境の変化は激しく、既存のビジネスモデルでは大きな成長は望めないと認識。「強みの企業文化をベースに、変化を先読みして新しいことを実行し、進化していく」と意気込む。まずは「24年度の業績が第一」とした上で「現場を知り、皆の意見を聞き、その上で議論する。志を示し、高い目標とテーマを設定し、実行する」。気を引き締め、新しい成長軌道を描く重責を担う。(大阪・錦織承平)

井上会長、世界最大の空調メーカーに 欧米・アジアで事業拡大

井上氏

ダイキン工業の井上礼之会長は同社を世界最大の空調メーカーに導いた。94年の社長就任後からグローバル化の潮流を先読みし、マレーシアOYLや米国グッドマンなど海外の大手同業を次々と買収。現地の規制にも巧みに対応し、欧米やアジアで事業を拡大した。長期体制を築き、2002年の会長専任後も影響力を保持。総合電機メーカーの経営が混迷していたのを尻目に、ダイキンの求心力として空調を中心に手腕を振るった。

チーム力を引き出す能力を身に付けたのは、淀川製作所(大阪府摂津市)の総務担当課長時代。地域との交流で発案した「盆踊り大会」は今や海外拠点でも開かれ、日本的な文化や経営で結束する象徴となっている。

日刊工業新聞 2024年05月10日

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