1時間で制気口80カ所点検、ロボットで風量測定を自動化
「風量測定業務において三つの自動化を目指す」。鹿島建築管理本部建築設備部技術グループの後藤真一郎次長は、主査を務める建設RXコンソーシアム風量測定ロボット分科会の“ゴール”をこう捉える。思い描くのは建築の3次元(3D)モデリング技術「BIM」を用い、自走しながら膨大な制気口(吹き出し口)の風量を個別に自動で測定するロボットの開発だ。併せて、測定結果を帳票に自動出力するまでの仕組みも構築する。
風量測定業務はオフィスビルなどに施工した換気・空調設備に対し、規定の風量を確保できているかを確認する品質検査の一つだ。ただ、建物の大型化で天井に設ける制気口が急増。これらを一つひとつ測定する作業者の負担は大きく、その後の帳票作成を含めて省力化・省人化が求められていた。「最近は天井高3メートル以上の建物も目立ち、脚立の使用に伴う安全面の問題も出ていた」(後藤次長)と打ち明ける。
とはいえ「ゼロからのスタートは難しい」(同)。そこで、分科会は鹿島が既存の車体と計測・昇降装置を組み合わせて開発した試作機を活用。現場での使い勝手を重視したソフト・ハードを追求するとともに、運用・展開の手法を確立する方針で臨んでいる。「工場やクリーンルームのように天井が高く、ホコリの発生を避けたい環境でこそ使いたい」というサブコンの意見も反映し、検証を繰り返している状況だ。
目下の課題は大きく三つ。一つ目は建築図や設備図など、データ形式の違いが地図の精度やロボットの動作に及ぼす影響の解消だ。現状では2次元データも多く、当面は形式変換や地図の修正が欠かせない。それでも「検証では広さ900平方メートル、80カ所の目標を約1時間で点検し、目標とのズレも平均48ミリメートルに抑えられた」(同)と手応えを示す。
システム天井用の照明器具に取り付けられる「レタン一体型制気口」への対応も急ぐ。吹き出し口の両側に空気の吸い込み口がある仕様のため、吹き出し風量を正確に把握するには制気口のみの測定が必要になる。ロボットでは実際、作業員と比べ吹き出し風量を少なく計測する例が見られた。吸い込み口を覆うなど、物理的な対策を講じる計画だ。
その上で、風量測定・調整業務のニーズに沿った最適な運用手法も模索する。後藤次長は「全ての制気口を一括で計測・調整するパターンだけでなく、一括計測した後に系統ごとに調整したり、系統ごとに計測・調整したりする例もあることが分かった」と明かす。
これらを解決できれば、現場への浸透は現実味を増す。現場での実証を進め、効果を見極めていく。