ニュースイッチ

賃上げ率で懸念される大手と中小の格差拡大、価格転嫁は進するか

大手企業で相次ぐ高水準の賃上げが中小企業にどこまで波及するか―。先行きは予断を許さない。連合がまとめた2024年春季労使交渉(春闘)の初回集計では中小の賃上げ率は大手の5%超(定期昇給相当込み)に迫る4%台(同)だった。ただ、これは最終集計に反映される中小組合員の1割程度に過ぎず、勢いを維持できるかは価格転嫁による収益改善を経営側が見通せるかがカギとなる。

デフレからの完全脱却に向けて好スタートを切った24年春闘。今後は中小の動向に焦点が移る。現時点で懸念されるのは23年に比べ企業規模間で賃上げ率の差が開いている点だ。連合の調査では組合員300人以上の大企業の賃上げ率が5・3%(加重平均)だったのに対し、300人未満は4・42%(同)にとどまる。23年の同時期は300人以上が3・81%、300人未満で3・45%だった。中小の交渉は夏にかけて続くため、この先、賃上げ率が伸び悩むと、差はさらに拡大しかねない。

機械や金属など中小製造業の労働組合を中心に構成する「ものづくり産業労働組合JAM」の18日時点の回答・妥結集計によると全体の賃上げ率は5・49%(加重平均)、300人未満は4・07%(同)だった。300人未満に限れば交渉が進捗(しんちょく)するにつれ、伸び率は鈍化傾向にある。

政府は人件費を含むコスト上昇分を納入価格に上乗せする価格転嫁を通じ、中小の賃上げ原資確保を後押しようと監視の目を光らせる。だが、発注側の意識改革は途上で、中小からは「転嫁は十分進んでいない」との声は根強い。

連合と全国中小企業団体中央会は、中小の賃金交渉が本格化するのに合わせ、22日にトップ会談を開催する。2月末に連名で発出した適正取引の推進や賃上げ環境整備に向けた共同談話に基づき、労務費の価格転嫁や人手不足などの課題について共通認識を深める狙いだ。

次年度に向け取引先との価格改定交渉が進むこのタイミングで、人件費についても俎上(そじょう)に載せられるかが今後の賃上げの波及、持続性を左右する


【関連記事】 中小企業のM&Aを後押しする「東海のスペシャリスト」
日刊工業新聞 2024年03月20日

編集部のおすすめ