JERAが全火力に「デジタル発電所」導入へ、稼働率改善ともう一つの狙い
自家発電向け外販
JERAは人工知能(AI)やIoT(モノのインターネット)を用いて、発電所の運転・保守作業を効率化させる「デジタル発電所」(DPP)について、2025年度中に自社の全火力発電所26カ所に導入する。専門家が24時間遠隔サポートして稼働率を改善するとともに、熟練者の技術・知識を蓄積・伝承するのが狙い。1発電所当たり40年間で400億円程度のコスト削減効果を見込んでおり、他社への“外販”も拡大する。
JERAのDPPは2本柱で構成される。一つ目は、発電所の運営に必要な情報収集・分析・対応決定・実行・評価まで20種類以上に上る自社開発アプリケーション(DPPパッケージ)。もう一つは24時間体制で発電所を遠隔監視するグローバル・データ分析センター(G―DAC)で、IoTで収集した発電所の運転データを基に深層学習AIでデータ分析し発電所をサポートする。
DPPパッケージを導入する火力発電所は現在、姉崎(千葉県)、川崎(神奈川県)、横須賀(同)、碧南(愛知県)、武豊(同)の5カ所。一方のG―DAC導入発電所はこれに加え、上越(新潟県)、千葉(千葉県)、富津(同)、横浜(神奈川県)、新名古屋(愛知県)、広野(福島県)、常陸那珂(茨城県)、常陸那珂共同(同)の13カ所。さらに国内2カ所、海外3カ所の計5カ所の他社火力発電所にG―DACを導入している。
導入発電所では稼働率や熱効率改善、業務見直しによるコスト削減効果が出ている。このため、今後2年間で自社・系列火力発電所のすべてに導入を進めるほか、製造業を中心とした他社の自家発電所への外販を強化する。特に、自家発電は今後、石炭火力からよりクリーンな液化天然ガス(LNG)火力への転換が進むとみられ「DPPを強みにリプレース需要を取り込んでいく」(JERA)方針だ。