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東京科学大で公表、初代トップ選考法に見る関係者の意識の高さ

東京科学大で公表、初代トップ選考法に見る関係者の意識の高さ

東工大の益学長(右)と東京医科歯科大の田中学長(統合合意に関する会見=22年10月)

東京医科歯科大学と東京工業大学は、10月1日に設立する東京科学大学の初代トップを選ぶ合同選考会議を設け、選考の基準や方法を公表した。学内関係者による自薦もしくは3人からの推薦による候補者を募集する。実質的に公募とし、自由でフラットな体制づくりを目指す。5月に両大学の全役員・教職員が視聴可能な公開ヒアリングを実施。6月中に候補者を決定する。任期は10月1日から2028年3月31日まで。

国立大学法人の長は経営トップとしての理事長や機構長に相当する。学長が理事長を兼ねる一般的なケースと、教育研究の責任者である学長を別に置くケースがある。今回はどちらの可能性も残している。

自薦、他薦ともに、候補者には大学などの組織経営の経験を求める。受け付けは3月21日まで。

合同選考会議は4月初旬に第1次候補者を、次いで同会議での所信聴取などを経て5人程度に絞った第2次候補者を公表する。5月初旬に公開ヒアリングを実施。6月初旬に部局長らによる意向聴取をした後、同会議による最終選考で候補者を決定する。

同会議は両大学の現在の学長選考・監察会議委員から選出された6人ずつで構成している。多様性に富んだ構成員による、社会に開かれた大学のトップにふさわしい人材を求めている。

日刊工業新聞 2024年02月28日
山本佳世子
山本佳世子 Yamamoto Kayoko 編集局科学技術部 論説委員兼編集委員
大学のような民主的な組織の意思決定は、「多様な意見を広くきちんと聞くこと」と「優れた視点を持つ有識者の判断を取り入れること」の両方が、重要だと思う。初代トップの選考を実質的な公募とした(海外大学の関係者などでも、応援者3人がいれば対象になる)ことは、両大学が新大学の理念として掲げる「フラットさ」を実感するものだ。が、自薦・他薦があまりに多いと、ハードルになってくる心配がある。前回の東京大学の学長選考では、第一次選考対象者から第二次選考対象者を絞る段階が不透明だ、と学内の批判が強く、弁護士による検証委員会が動くこととなった。そのような難しさを踏まえた上で、候補者の推薦を広く確保するとしたことに、関係者の新大学に向けた意識の高さを感じた。

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