生体吸収材を核に医療機器を開発 —研究から販売までの一気通貫体制で事業推進
記者の目/ここに注目
□企業の成長とともに自らも高められる人材を求める
□会社として大切にする価値観に沿った行動も評価の対象
グンゼメディカルは2023年4月、研究開発から販売までを手がける総合医療機器メーカーとして新たなスタートを切った。親会社のグンゼがメディカル事業部の一部機能(研究・開発・販売)を100%連結子会社であるグンゼメディカルに移管し、グループ内での事業体制を強化した。
今後、グンゼメディカルでは強みである生体吸収材をコアテクノロジーとした医療機器の開発に力を入れる。「革新的な“バイオマテリアル×デバイス”の提供」により、患者のQOL(生活の質)向上により貢献していく方針だ。
組織補強材は国内で高いシェア
現在、主な取扱い製品はいずれも生体吸収性の骨接合材料や組織補強材、合成人工硬膜のほか、癒着防止材「テナリーフ」、人工皮膚「ペルナック」などの医療用材料。さらに患部の壊死組織を取り除く手術に用いる超音波装置や脱毛レーザーなどの医療機器も販売している。グンゼはメディカル事業部の主力工場である綾部工場(京都府綾部市)に新棟を建設し、生産設備を増強する計画を発表している。綾部工場では組織補強材や人工皮膚などを生産しており、今後グンゼメディカルでも人員の増強などを進める。
管理部人事総務チームの釣谷藍マネージャーは「成長戦略を描き、発展途上にある会社なので、会社とともに成長していきたいという意欲を持った人材を求めている」と語る。
グンゼが医療分野に進出したのは1980年代。衣料分野で長年培ってきた繊維素材の技術やノウハウを活かし、1986年に日本で初めて生体吸収性縫合糸の事業化に成功した。その後も組織補強材「ネオベール」などを開発し、国内で高いシェアを獲得。事業拡大に伴い、2010年にメディカル事業部、17年に販売子会社グンゼメディカルジャパンが設立された。19年には医療機器の輸入商社メディカルユーアンドエイを買収し、22年にメディカルユーアンドエイ社を存続会社として、グンゼメディカルジャパンが合流する形で、グンゼメディカルが発足する。
社内には会社の成り立ちからグンゼ、グンゼメディカルジャパン、メディカルユーアンドエイそれぞれの出身者がいる。「今回、グループ内での事業統合を経て、研究開発から販売までを一気通貫でマネジメントすることになったので、組織や部門の垣根を越えて情報をフィードバックしたり、活発な意見交換をしたりする機運が高まっている。ここから新しい企業文化や組織風土を醸成していきたい」(釣谷マネージャー)
年齢や性別を問わず管理職登用
2023年9月現在、社員数は320人で、そのうち女性が43%を占める。また、女性管理職の割合も課長(マネージャー)以上が16・1%、係長以上が36・6%と高い。マネージャーへの登用も適性や実績、意欲があるかどうかが判断基準とされ、「年齢や社歴、性別は関係ない」(同)という。また、社内での自律的なキャリア形成を支援するため、希望部署についての自己申告制度があるほか、管理職候補となる総合職とスペシャリストを目指す専門職を選択できる複線型の人事制度も導入している。さらに業務に関わる資格取得やセミナー受講などの費用を最大75%会社が負担する助成制度も設けている。
社内で共有し、全社で大切にする価値観として「優良品の提供に徹し、社会に貢献する」、「Patients First(患者第一に)」、「勇気をもって、ともに変わっていこう」などを掲げている。人事評価制度には業績と行動の2つの評価基準があり、行動面では「周囲によい影響を与えているか」など、業績への寄与だけではなく、この価値観に沿った行動ができているかも評価の対象になっている。
理系出身の若手社員に聞く
職場と大学院で乳房再建基材を研究
現在、乳房再建基材の研究に携わっています。生体内で吸収されながら脂肪組織に置換しますので、乳がん患者が自分の乳房を取り戻すことができる画期的な技術です。2022年春から大学院に学生として籍を置き、週1〜2日は大学院で研究や実験を進めています。30年までの事業化が当面の目標です。
QOL研究部にはさまざまな分野の専門家がいます。研究で壁にぶつかっても的確な助言をしてくれる人が必ずおり、先輩、後輩関係なく相談できる雰囲気が職場にはあります。
会社DATA
所在地 大阪市北区堂島2-4-27
創 業 1986年
代表者 代表取締役社長 松田 晶二郎
資本金 4650万円
従業員数 320人(2023年9月1日現在)
事業内容 医療機器の開発・販売
URL https://gunzemedical.co.jp/