75年の歴史を持つ千葉有数のモノづくり企業 ―建設機械のキャブでニッチトップ企業
記者の目/ここに注目
□2期連続で売上高増加、4年連続でベアを実施
□社員寮完備!奨学金の代理返還で若者を応援
千葉県でモノづくりをするなら、お勧めなのが二宮産業(千葉市花見川区)だ。建設機械の操作室の外装である「キャブ」のメーカー。独立系であり、同製品で高シェアを持つニッチトップ企業である。日立建機を始め、国内のほとんどの建機メーカーと取引しており、2023年3月期の売上高は約138億円、経常利益は約12億円。売上高は2期連続で増加しており、経常利益率は8.8%と、部品メーカーとして非常に優秀な業績だ。大串隆社長は「多くの取引先と長年にわたってお付き合いをいただいていることが、経営の基盤になっている」と語る。同社の工場や本社は千葉県のみにあり、県外の転勤はない。結婚や育児、親の介護など、ライフスタイルに変化があっても千葉県で働き続けることができる。技術者が現場でじっくりと腕を磨くには、この安定した環境は大きなプラスとなる。
従業員数は約290人で、毎年5〜10名の新入社員が入社している。新入社員の学歴は高卒生、高専生、大学生とさまざまだ。彼らは入社後、2週間の講義形式の研修を受けた後、工場で半年間の現場研修を行う。骨格部品であるパイプの曲げ加工や組み立て、溶接、塗装など一連の製造工程をすべて経験したあと、各部署に配属され、そこからは先輩に教わりながら仕事を学んでいく。詳細な人事評価制度があり、賞与や昇給は評価によって決定。優秀な成績を出せば、昇格も早く、社員としての成長を実感できるようになっている。
二宮産業という社名は、江戸時代の農政家、思想家である二宮尊徳から取られている。経済と道徳の両立を訴えた尊徳の思想に従うがごとく、二宮産業の福利厚生や待遇は、企業規模を超えた手厚さだ。まず給料だが、同社は4年連続で初任給を引き上げる。最近の物価高を考慮し、2024年度は前年の21万円から22万円にアップする予定だ。物価高への対応として賃上げする大企業は珍しくないが、中堅企業では少数派だ。ワンルーム型の独身寮もある。2018年に建設し、家賃は駐車場代込みで5000円からという破格さだ。
奨学金の返済負担が社会問題となるなか、同社は代理返還制度も導入している。社員に代わり、奨学金を返済する制度だ。独立行政法人日本学生支援機構のホームページによると、千葉県の製造業で同制度を導入しているのは二宮産業のみだ。
給与面での手厚い支援だけでなく、能力の向上や技能の研鑽のためにも十分な用意がある。溶接や玉掛け、クレーンやフォークリフトの操作など、業務に必要な資格取得を支援している。それ以外に、英会話や着付けなど仕事に直接関係ない資格でも、かかった費用の半額を補助している。「企業の根本は人である」という同社の姿勢の表れだ。
採用にあたり、同社はどういった人材を求めているのか。大串社長は「人柄です」と即答する。突出した能力を持つ人でなくとも、世代や価値観の異なる上司、部下、同僚と仲良くでき、チームワークで仕事ができる人材を求めている。理系、工業系の学生が中心だが、近年では文系の学生も採用している。
キャブ事業は売上高の9割を占めるが、そのほかに立体駐車場の開発・製造・販売も行う。建機のアタッチメントの開発など新規事業にも取り組む。大串社長は「長年の技術基盤、取引先との信頼関係を大事にしつつ、新たな事業にも挑戦していきたい。未来の二宮産業を作るため、協調性を持ち、チャレンジ精神あふれる学生に入社してほしい」と期待を寄せている。
理系出身の若手社員に聞く
自己成長を感じられる職場
千葉工業大学電気電子情報工学科(現電気電子工学科)を卒業し、2018年に入社しました。入社の理由は、設計と製造の距離が近いことです。現在は日立建機のキャブの設計をしていますが、工場が近いとトライアンドエラーなどが比較的気軽にできるので助かります。 当社は優しい人が多く、職場の雰囲気が良いと感じています。仕事のスケジュール組みも自分に任せてもらえる部分が多く、働き方を自分で決められるのが魅力です。 設計者として、自分が設計した製品が量産化されると感動します。モノづくりが好きな人には最適な会社だと思います。
会社DATA
所在地 千葉市稲毛区長沼町334-2
設立 1948年2月
代表者 代表取締役社長 大串 隆
資本金 2億5000万円
従業員数 300人
事業内容 建設機械用運転室「キャブ」など主要部品の設計・製造
機械式駐車装置「パークエース」の設計・製造・販売・据付・メンテナンス
URL https://www.ninomiya-co.co.jp/