耐荷重80%向上…NTNが国内初商用化へ、アルミ・樹脂複合すべりネジ開発
NTNはナットの基材を樹脂からアルミニウム合金に置き換え、耐久性と放熱性を高めたすべりネジを開発した。ネジの軸と接触するナット表面には耐摩耗性に優れる樹脂層を形成し、潤滑油なしでネジを動かせる。自社の全樹脂製ナット比で耐荷重が80%向上し、摩耗を70%減らせる。医療機器や半導体製造装置などを駆動するすべりネジとして提案し、競争力を強める。
樹脂製すべりネジはネジ軸の回転を直線運動に変える直動の駆動機構。鋼球製のボールネジと異なり、潤滑油不要で保守作業も減らせる。医療機器や半導体・食品などクリーンな環境の軽量・小型製造装置用に適する。
NTNが開発したすべりネジはナット基材がアルミ合金、ネジ軸との接触面が樹脂で構成する。金属による耐久・放熱性と、樹脂による無潤滑を両立した。金属・樹脂複合すべりネジを商用化できれば国内初という。2027年度に5000万円の売り上げを目指す。
アルミ合金のナット基材表面に、独自樹脂のポリフェニレンサルファイド(PPS)複合材料を射出成形で形成する。PPSは耐熱性や耐薬品性、電気絶縁性に優れる。アルミ合金とPPS複合材の接合面は、凹凸のエッチング処理でかみ合わせて一体化した。アルミは軽量・低コストの金属で、エッチング処理も施しやすい。
全樹脂製ナットの代表的な自社製品と比べると、ネジ軸方向への耐荷重1・8倍、摩耗量74%減、軸温度40%減となった。全樹脂製の弱点の耐荷重が改善し、摩耗劣化も低減でき長寿命化する。
軸温度が低いため、熱膨張による機械変形を嫌う医療機器、半導体製造装置に適する。新たな需要を開拓するほか、既存の樹脂製すべりネジからの更新を見込む。輸出も視野に入れる。
日刊工業新聞 2024年2月13日