周期長期化で作業負担減…近鉄、車両検査の効率向上
清掃・塗装にロボ導入
近畿日本鉄道は安全を確保しつつ、鉄道車両の検査の効率化に取り組んでいる。重要部検査と全般検査の周期の長期化やロボットへの置き換えなどで、検査を担う五位堂検修車庫(奈良県香芝市)に検査入場する車両数が1日当たり平均で従来の2両から1・3―1・4両に減少した。安全で快適な輸送を支えるため改善を重ねている。(大阪・市川哲寛)
車両検査は「まさに心臓部」(近鉄)と位置付け、2両編成であれば検査や検査後の試運転を含めて7日間かけて丁寧に行う。
近鉄は私鉄では国内最長の規模。ただ「合併の歴史を示す」(同)ものの一つとして線路幅が異なる線区がある。保守でも負担になる上、検査に向けた五位堂検修車庫への輸送や検査のために別の線路幅に対応した台車に置き換える車両もあるなど、作業負担が大きい。
検査周期は徐々に長くなっており、2000年に現在の全般検査が8年以内、重要部検査が4年または走行距離60万キロメートル以内に変更した。周期は各社が基準を定め、国土交通省が認可する仕組みで、技術の進歩などの状況に応じて周期を変更してきた。
ロボットは清掃や塗装の工程で導入している。高圧で空気を噴射する気吹かしで車両床下にある機器類などを清掃する。屋根塗装にも活用、効率化に加え作業安全性向上や高品質化につなげている。
車軸は超音波や磁気で傷を探して必要な整備を行い、摩耗した車輪は旋盤で削り直す。分解、整備した機器を元通り組み込んだ後の出場検査では試験用の連結で検査室とオンラインで結び、モーターやドア、床下機器の動作検査などを行う。
同車庫が稼働した1982年には同車庫の年間検修能力1000両に近い950両を検査したが、現在は約370両の規模。これとは別に、同車庫以外で約190両を分解せずに外観のみの検査を行い、同車庫の負担は軽減している。
当然、全検査に万全を期しているが、それでも「完璧な検査を行っているつもりでもすぐ故障する場合もある」(同)とトラブルを防ぎきれない苦い経験もある。故障対策を順次行い、必要に応じて検査内容も変更するなどこれからも改善が求められる。
さらに、今後の課題は人材育成だ。同車庫の人員は、検査周期が長期化した00年の約470人から現在は約320人に減ったうえ、作業員の高齢化が進み、次の担い手を育てる必要に迫られている。秋に導入予定の新造車両については「検査を簡略化できるところもある」(同)とし、一層の省力化も進める。
信頼確保へ安全が最優先なのは変わらないが、検査は事業の一環でもあり効率化とのバランスを取っていく。