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DX支援加速へ試金石、リコーが刷新する共創拠点の全容

DX支援加速へ試金石、リコーが刷新する共創拠点の全容

バーチャルヒューマン(中央)との対話。AIを用いた臨場感・没入感のある商談を体感できる

独自AI提案、技術者と顧客つなぐ

人工知能(AI)を活用し、顧客のデジタル変革(DX)を支援―。リコーは顧客との共創拠点「リコー・ビジネス・イノベーション・ラウンジ・トーキョー」(リコーBIL東京)を移転・刷新し、2月1日に開設する。自然言語処理や空間認識分野に強みを持つ独自のAI技術などを多様な業界の課題解決に役立てられると訴求し、顧客層拡大を図る。リコーがデジタルサービス企業への転換を加速できるかの試金石にもなりそうだ。

リコーBIL東京は従来、東京都港区の田町地区に設置していたが、同じ港区内の品川地区にある高層ビル「品川シーズンテラス」に移転し、2月1日にリニューアルオープンする。施設面積は約1000平方メートル。顧客企業の経営者を招き、対話やワークショップ(参加型講習会)を通してAIを活用したビジネスの設計から実装に至るまで伴走支援し、課題解決につなげることを狙う。

初年度は年間360社の来場を見込み、5年で新価値創造と社会実装100件を目指して、人材や体制を拡充させる。既にAI関連の技術者は社内に約300人在籍するが、他部門などとも連携していく。リコーの山下良則会長は「この場所を技術者にとっての世の中に向けた“窓”にしたい。技術者が課題を解決するという認識で社内準備は整った」と語る。

点群データを活用し、現場の空間のデジタル化を提案

AIの活用事例として、自然言語処理AIを活用した分類業務のデジタル化や、空間データを作成・利活用するAIを用いた設備管理を提案する。サトーホールディングス(HD)傘下のサトーやBIPROGY(ビプロジー、旧日本ユニシス)と取り組んだ実績を持ち、今後も共創事例を増やしていく考えだ。

リコーBIL東京には、顧客が集中して課題に向き合い、新たな気付きを得ることをサポートする仕掛けも備えた。対話の場である「ラウンジ」では映像や光、音、香りといった演出で感性を刺激し、適度な緊張感とくつろぎを生み出して対話の活性化を図る。デジタル技術を取り入れた次世代会議空間「リコープリズム」でも多様な空間演出ができるようにし、顧客の想像力をかきたてる。山下会長は「企業トップと想像力を発揮しながら話せる場となった」と胸を張る。

リコーは複合機の販売や保守が主体のビジネスモデルから脱却し、デジタルサービス企業への転換を急いでいる。産業界ではコロナ禍を機にDXの必要性が叫ばれ、テレワークが浸透。オフィスでの印刷量は今後も減少が見込まれる。2022年12月にはグループウエア大手のサイボウズと資本提携を発表するなど、デジタル分野における他社との協業や商材の拡充に力を注いできた。

リコーBIL東京の刷新は、こうした“仲間作り”を加速できるかの試金石でもある。自社の強みを的確に伝え、魅力を感じてもらう取り組みの実効性向上が期待される。

日刊工業新聞 2024年01月29日

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