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「メタバース」いよいよ普及か、KDDI・ソフトバンクがコンテンツ充実へ

「メタバース」いよいよ普及か、KDDI・ソフトバンクがコンテンツ充実へ

KDDIの「αUライブ」。360度自由視点の音楽ライブをスマホで楽しめる

KDDIメタバース(仮想空間)関連サービス群「αU(アルファユー)」の一環として、3次元(3D)音楽ライブ配信サービス「αUライブ」の提供を始めた。メタバースでのライブ配信者は増えている一方、作成の難しさから番組数が不足。配信者の収益拡大策やアーティスト発掘の仕組みも作り、コンテンツの充実につなげる。通信業界ではソフトバンクもバーチャル体験が可能なコンテンツの制作を手がけており、メタバースの普及を後押ししそうだ。

αUライブはスマートフォンの画面をなぞるだけで好きな角度や距離から音楽ライブを視聴可能。視点操作を迅速に反映する高品質な映像は高性能のパソコンでないと視聴できなかったが、インターネット上のサーバーで映像を処理する「クラウドレンダリング」の活用でスマホでも視聴できるようにした。

KDDIはコロナ禍が本格化した2020年5月、仮想空間上で東京・渋谷を再現した「バーチャル渋谷」を開設。単一の仮想空間内で複数サービスを提供する路線を目指したが、使いやすさの観点から用途ごとに複数の仮想空間を使い分けるαUを23年3月に始めた。

KDDI事業創造本部の中馬和彦副本部長は「仮想空間でのライブ配信者は1000人を超えた。コロナ禍を経て企業・自治体による仮想空間イベントも定着した」と説明する。一方、イベント期間以外は利用者がほぼいない時間帯もあり、「コンテンツ不足が普及の課題になっている」と指摘する。

このためKDDIは、1000万人超のファンがいるバーチャルタレント「Kizuna AI(キズナアイ)」を生み出したActiv8(アクティベート、東京都渋谷区)に出資。αUライブでActiv8と提携するアーティストのライブや同社が制作したコンテンツを配信する。

今後は個人や自主制作のインディーズで活躍するアーティスト向けの音楽配信代行サービス事業を予定する。αUライブを含むアーティストの映像や楽曲を「スポティファイ」などの主要音楽配信サービスに提供し、新たな収益源にしてもらう取り組みも始める。

他方、ソフトバンクはグループ会社のリアライズ・イノベーションズ(東京都港区)がBirdmanと提携し、3Dのライブ映像を“さわって”楽しめるコンテンツを企画・制作するサービス「さわれるライブ 5D LIVE」を提供している。コンテンツの視聴者はデバイスの画面をタッチすることで、アーティストがいるメタバース上で花火をあげたり、実際に投げ銭を送ったりすることが可能だ。

通信業界では第5世代通信(5G)をはじめとする通信技術や、拡張現実(AR)や人工知能(AI)といったデジタル技術の発展を背景に、消費者に新たな体験をもたらすコンテンツを提供できる環境が整ってきている。ただ、そうしたコンテンツをつくるには期間やコストを要する場合もあり、制作事業者には費用対効果の向上が求められる。

KDDIの中馬副本部長は、メタバースのコンテンツ作成には高い能力が必要な点も課題と指摘する。それだけに「生成AIで誰でもメタバースコンテンツを作れるようになれば普及する」と話す。動画投稿サイト「ユーチューブ」のように、個人ユーザーが気軽に動画を作成できる環境の構築を目指す。

NTTも独自の生成AI基盤「tsuzumi(ツヅミ)」を用いて利用者のデジタル分身を低コストで生成可能な技術を開発した。今後の普及状況が注目される。

日刊工業新聞 2024年01月24日

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