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北米42拠点全量に再生エネ導入、富士フイルムが活用する「バーチャルPPA」とは?

北米42拠点全量に再生エネ導入、富士フイルムが活用する「バーチャルPPA」とは?

VPPAによって電気を再生エネ化する北米拠点の一つ

富士フイルムホールディングス(HD)は、米国とカナダの北米42拠点で使う電力全量を実質的な再生可能エネルギーに切り替える。バーチャルPPA(電力購入契約、VPPA)を活用し、対象となる年3億キロワット時の大量の使用電力を再生エネに転換する。購入方法が確立され、政府の強力な支援策によって再生エネ発電所の開発が活発となっている米国では、日本企業も再生エネを大量に調達しやすくなっている。(編集委員・松木喬)

富士フイルムHDとVPPAを結んだ米国のナショナル・グリッド・リニューアブルズが、テキサス州に太陽光発電所を建設する。出力27万キロワットのうち、12万5000キロワットが富士フイルムHDの契約分だ。2025年後半に稼働する。契約期間は15年。

PPAは電力を使う需要家と発電所が契約する形態。電力会社を介さないため、需要家と発電事業者が交渉して電気の価格を決定できる。長期契約が一般的なので、需要家は決めた価格で電気を購入し続けられる。

VPPAは電気ではなく、発電所から再生エネの価値を購入する。価値は「証書」として発行され、受け取ると再生エネの利用実績となる。富士フイルムHDの北米42拠点はこれまでと同じ電力会社から電気を購入しながら、再生エネを使ったことになる。

今回のVPPAは、電力の市場価格が高騰すると、発電事業者から利益を受け取る契約になっている。同社が購入する電気代が上昇しても、受け取った利益で負担増を軽減できる仕組みだ。逆に市場価格が下落すると発電事業者の利益を補填するが、電気代が下がるので相殺できる。

同社環境・品質マネジメントグループの岩間秀司統括マネージャーは「成熟しているから」と、VPPAを採用した理由を上げる。日本でも制度変更でVPPAが認められたが、会計処理を含めて米国の方が制度として確立されている。

また、1件の契約で再生エネを大量調達できるのも大きい。同社が証書を調達する太陽光発電所は、日本最大の太陽光発電所と同規模だ。バイデン政権はインフレ抑制法によって気候変動対策を強力に推進しており、広大な土地があるテキサス州では大型の再生エネ発電所の開発が続いている。

VPPAは相対で契約内容を詰めるため手間がかかるが、1件で済むと労力を抑えられる。富士フイルムHDは医薬品や医療機器、半導体材料、インクなどの製造拠点の電気を一気に再生エネ化し、グループ全体の二酸化炭素(CO2)排出量の9%に当たる9万トンを削減できる。

環境・品質マネジメントグループの中井泰史グループ長は「地域に合った方法で再生エネ導入を進めている」と語る。欧州では事業所内に風力発電設備を設置したり、証書を調達したりして再生エネ化した。大量調達が難しい日本では事業所への太陽光パネルの導入のほか、PPAも検討する。神奈川事業場足柄サイト(神奈川県南足柄市)では回収したCO2と水素で燃料をつくるメタネーションを計画しており、実証機導入に向けた準備中だ。

日刊工業新聞 2024年01月23日

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