「非常に好調」(ソニーG社長)…デジカメ市場に中国需要の追い風
中国でカメラ需要の回復が鮮明だ。カメラ映像機器工業会(CIPA)がまとめたデジタルカメラの出荷実績によると、2023年上期(1―6月)の中国向け出荷額は欧州や米州などを上回った。コロナ禍に伴う外出機会の制限が緩和され始めたことなどを背景に、国内各社のカメラ事業の業績も好調に推移している。ただ国内外で景気の先行き不透明感は残っており、カメラ需要の盛り上がりに水を差す可能性もある。(阿部未沙子)
CIPAによると、デジタルカメラ全体の23年上期の出荷額は前年同期比12・6%増の3137億円となった。このうち、日本以外の海外向けは同11・4%増の2827億円だった。
特に中国での需要の回復は顕著だ。ロックダウン(都市封鎖)による外出制限があった22年上期の反動もあるとみられる。中国向けの出荷額は同33・9%増の839億円、出荷数量も同26・7%増の71万台に伸びた。23年上期は、出荷数量で中国が米州を上回った月もあった。
日本国内はもちろん、海外での制限緩和は、国内カメラ各社の業績に追い風となっている。富士フイルムホールディングス(HD)の国内外合わせたデジタルカメラの売り上げは「(前年同期比で)6割以上伸びた」(後藤禎一社長)。24年3月期見通しでは、イメージング事業の売上高、営業利益をともに上方修正した。
ニコンもミラーレスカメラの好調な販売を受け、24年3月期連結業績予想の売上高を上方修正。徳成旨亮取締役専務執行役員は「中国市場はけん引役となっている」とした上で「嗜好(しこう)品であるカメラに関してマーケット全体が伸びている」と手応えを示す。
ソニーグループも「カメラの市場は非常に好調」(十時裕樹社長)。特に中国やアジアでの実売が堅調だという。ただ、ハードウエア事業において欧米を中心とした景気の減速などを懸念。中国での景気後退については「テレビ、スマートフォンは影響を受けやすい」(十時社長)としており、カメラに波及する可能性は考えられそうだ。
キヤノンのカメラ販売も好調に推移する。一般消費者向けのミラーレスカメラと監視用カメラを含めたイメージング事業の1―6月の売上高の伸び率は、国内が前年同期比13・5%増、海外が同15・1%増だった。6月に発売した「EOS R100」がカメラ使用者のすそ野拡大に貢献すると見込む。浅田稔専務執行役員は「市況を見極めながら積極的に販売促進活動を行う」とする。
外出機会の増加により、旅行など外出先で使う機会が多いカメラの需要の伸びは期待できる。ただ、国内外での景気減速に伴う個人消費の落ち込みがカメラ需要にも波及する懸念は拭えない。各メーカーは過剰な在庫を抱えるリスクを避けるためにも、需要と供給の見極めが求められそうだ。
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