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「下町ロケット」支えるバルブ産業、新潮流のカギは女性

J―Win理事長 内永ゆか子氏×日本バルブ工業会広報副委員長 奥津良之氏
 

ネットワーク作り、海外ともリンクして人材育成


内永 企業に入った技術系女性を育てるにはメンターをお勧めします。IBM時代には一人ひとりにメンターをつけました。昇進の際、営業やマネジメントは潜在的な可能性を見越して評価することで、上がっていきます。「彼女はやれそうだ、やらせてみよう」とか。でも技術系は“実績”がないといけない。それでメンターの指導でパテントや論文など、やっていることをアピールできるよう「実績を見える化」しました。結果、フェローにもどんどん上がってきたのです。

奥津 技術分野が実績重視というのはよく分かります。そこに女性の場合は特にメンターをつけてきめ細やかに育成するのですね。

内永 また日本バルブ工業会を活用して、女性による「バルブ工業会女性技術者ネットワーク」などをお作りになったらどうでしょうか。女性は数も少ないので組織内で孤立しがちですが、ネットワークを作った途端に元気になるんです。そして私だったら海外の同じようなコミュニティーとリンクさせます。米国にSWE(Society of Woman Engenieers)というのがありまして、その中にバルブ工業会とパートナーになるようなグループも入っていると思います。そういうところとネットワークをして、2年に1回くらいでも良いので「グローバルウィメンズミーティング」ができれば全然違ってきますよ。また、そういう話を大学に行ってアピールするのも良いと思います。

奥津 学生リクルーティングにもなりますよね。そんな体制があるなら行ってみようかなと。

内永 IoTの波の中で絶対に新しい人材が必要なわけで風穴を開けていくには、そういうことをやっていかないと、今のままでは消耗戦です。SWEには3万人くらい会員がいますが、企業会員が1万人弱で残りはみな工学部や理学部などの学生さんでSTEM(サイエンス・テクノロジー・エンジニアリング・マスマティックス)と言われている方たちです。この組織は日本ではJ―Winが窓口ですが、国内ではまだ技術系の人が少ないのです。まさに今後もっと力を入れていくべき領域だと思います。

奥津 女性技術者は間違いなく戦力になりますね。国内バルブ業界はコンパクトでもあるし、イノベーションを起こしやすいかもしれません。

内永 今まで取り組んでいないのなら、これからがチャンスととらえ、どんどんやっていきましょうよ。まずは女性や若い層に集まってもらって「IoT時代に我々はどういう立ち位置でどう戦うのか提言してみて」と聞いてみれば、みんな頑張るんじゃないでしょうか。そのきっかけをぜひ提供してください。お手伝いできることがあればさせていただきます。やはり日本に技術系の女性をもっと増やしていきたいです。

奥津 これからもぜひよろしくお願いいたします。

内永ゆか子(うちなが・ゆかこ)
1946年生まれ。71年日本IBM入社。開発部門を歩み95年取締役、04年専務執行役員。08年ベルリッツコーポレーション会長兼社長兼CEOなど。07年からJ―Win理事長を務める。

奥津良之(おくつ・りょうじ) 
1957年生まれ。アズビルAACグローバル営業本部営業技術部主管技師。日本工学会フェロー。計測自動制御学会フェロー。国際電気標準会議ではTC65/SC65B/JWG17で議長を務める。
昆梓紗
昆梓紗 Kon Azusa デジタルメディア局DX編集部 記者
さまざまな設備や機械になくてはならない、縁の下の力持ちであるバルブ。その魅力を理解し、実力を発揮する女性が少しでも増えることを期待します。

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