ドラッグストア10番手、セイムスが存在感発揮へ打ち出したAI活用戦略
店頭端末タッチ、すぐ発行
富士薬品(さいたま市大宮区、高柳昌幸社長)はドラッグストア「セイムス」で、人工知能(AI)の活用を進めている。来店客の属性や購買履歴をAIが分析し、個人に適したクーポンを発行する端末「セイムスタッチ」を全店舗に整備した。スマートフォン向けアプリケーションやポイントカードの会員が利用できる。クーポンを通じて来店客のニーズに合った商品の購入を提案して購買活動を支援し、来店頻度を高める狙いだ。
セイムスは、食品や医薬品のほかプライベートブランドも販売し、全国に約900店舗を展開している。ドラッグストア事業本部販売促進部の岩瀬裕志部長は「売上高の規模では全国のドラッグストアで10番手」と説明する。さらなる成長に向けて「会員の来店頻度の高さで存在感を高める」(岩瀬部長)戦略を打ち出した。
そして生まれたのがセイムスタッチだ。ID―POSデータ(購買情報)を使ったデータ分析を手がけるマギー(沖縄県豊見城市)と連携して開発。店舗入り口に設置した端末にスマホアプリやポイントカードをかざすと、その日使えるクーポンを発行する。対象商品を購入するとセイムスのポイントがたまり、ためたポイントで買い物できる仕組みだ。2022年8月に東京都と千葉県の一部店舗に試験導入したところ、来店頻度や一人当たりの購入点数が向上したことから全店への導入を決めた。
ある競合のドラッグストアも同様のサービスを行っているものの、来店客自身で発行するクーポンを選択する必要があり手間と時間がかかるという。一方セイムスタッチはAI活用により個人に応じたクーポンを自動で発行。タッチから発行まで10秒内で完結するスピード感も特徴だ。
例えばセイムスで歯磨き粉を購入し、使い切るタイミングである1カ月後に来店すると、歯磨き粉にひも付いたクーポンを発行し購入を促す。岩瀬部長は「店頭で会員にパーソナライズした打ち手を繰り出すのは競合他社がまだ着手できない領域だ」と自信を見せる。
セイムス会員は来店客の7割。さらにセイムスタッチ利用率は3割、クーポンの利用率が1割と徐々に向上している。今後はタッチ率5割を目指す。
また、現在発行しているクーポンは自社ポイントに還元されるが、今後は商品価格を割り引きするクーポンの発行も予定している。「1人でも多く、一つでも多く購入してもらう取り組みを地道に進める」(岩瀬部長)ことが成長のカギとなる。(さいたま・大城蕗子)