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トヨタ紡織がCVC通してイノベーション加速、守りから攻めへ意識改革

トヨタ紡織がCVC通してイノベーション加速、守りから攻めへ意識改革

猿投工場で昨年12月に開いた「CVCスタートアップ企業展示会」

車室空間事業など広げる

トヨタ紡織がコーポレートベンチャーキャピタル(CVC)を通じ、社内のイノベーション風土を醸成している。MaaS(乗り物のサービス化)の進展など市場環境の変化に対し、社内リソースだけでなく外部の知見・技術も活用。オープンイノベーションを活性化し、車室空間事業や製品領域の拡大に向け開発スピードを上げる。(名古屋・増田晴香)

トヨタ紡織はオープンイノベーションを促進する目的で、2021年4月にCVCを立ち上げた。CVC推進体制は専任の8人と他部署兼務の5人のほか、投資決定機関の「投資委員会」などで構成する。年間約10億円の予算枠を確保し、30年までに累計80億円を投資する想定だ。

トヨタ紡織のCVCの出資先

投資重点分野は車室空間事業の拡大につながる人工知能(AI)や顧客体験(UX)分野のほか、生産現場の改善に資するロボティクス、電動化など。既にライドシェアサービスのNearMe(ニアミー、東京都中央区)や自動化倉庫を手がけるCuebus(キューバス、同江東区)など10社のスタートアップに出資している。

22年度は2050社をリサーチし、185社と面談。最終的に5社への出資を決めた。企業の選定に当たり、投資委員会の委員を務める坂井生知技術開発本部副本部長は「シナジーは期待するが、すぐに結果が出ることにはこだわらない」と長い目線でみる。枠を限定し過ぎず、あくまで社内の知見を外に広げることを重視する。

23年12月には出資先全10社の技術を紹介する展示会をトヨタ紡織の猿投工場(愛知県豊田市)で開いた。同社として初の取り組み。同社の従業員や役員が出資先の技術を現地現物で体感し、意見交換することでスタートアップとの関係を強めた。

同社はトヨタ自動車との取引が大半を占め“守りの風土”を持つ。トヨタ紡織の大井啓行最高戦略責任者(CSO)は「外部と接点を持つことで新たなイノベーションを作り出していく風土に変える」とスタートアップと組む狙いを話す。一部の出資企業とは既に共同開発や概念実証(PoC)を進めているが、事業化の実績はまだない。

社内のマインドセット(心構え)も足元の課題。イノベーションへの意識が徐々に浸透しているが、全社的な浸透は道半ばだという。今回の展示会を皮切りに、イベントなどを通じてイノベーションの風土醸成につなげる考え。同時に投資決定の目利き力を高めるための人材育成や、インセンティブの仕組みを導入することも検討する。

日刊工業新聞 2023年1月9日

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